「お母さんは怒ってはいなかったけど、人の多い山手線にベビーカーで入って来たから、なんとなくお母さんも緊張気味で、息子さんが動くと、余裕のない表情で笑顔がなくなってた。なので、『今日から実践してみよう』と思い、最初は男の子に変顔とかしてみたのですが、少し睨んできました(知らない人だからか不安だったのかな・・・)。笑ったりはしてくれなかったけど、今度はお母さんに『何歳ですか? うちは10カ月になったばかりで。息子さん元気に動きますね』と聞いてみたら、途端にお母さんがニコッとなり、『そうなんです! すごく動いて動いてー。ほんと成長早いですよ』と言っていました。その後、若干電車内がほのぼのした雰囲気になりました」
「それと、話しかける前はベビーカーで息子さんが『あー、うー』って話すと、『もうすぐ着くから!(黙って欲しい様子)』と言ってたのですが、話しかけた後、息子さんがベビーカーの背もたれの可愛いフルーツが描かれた生地を触りながら何か声を出してたら、それをみてお母さんがニコッとして『このフルーツ好きなの? うふふふ』って反応してて、それが、一番感動しました」
さっきまで余裕を失い、子どもをたしなめがちだった母親。でも、知人が話しかけた後は「お母さん」の顔に戻ったという。
家の中では優しい「お母さん」も、電車の中だと、「規律を守る一市民」になってしまう。子どもに厳しくたしなめてしまうのも、「一市民として恥ずかしくない振る舞い」を優先して、余裕を失ってしまうから。「お母さん」に戻りたくても、節度のない人間だと周囲から叱られたら。その恐怖に萎縮する。そのために、牢屋から脱走しないように見張る牢番のような顔つきになってしまう。そしてその状況は、母子だけでは打破しようがない。
第三者からの、ちょっとした声かけが、「ファシリテーター」になる。お母さんが「一市民」の顔から「お母さん」に戻る手助けをする。その優しい笑顔を見ると、車内の人間もほだされる。ほんの少し、声かけという潤滑油を一滴垂らすだけで、ギスギスした車内空間が優しい空間に変わる。
群集との架け橋になる人
有名な動画をひとつ、紹介させてほしい。草原で寝そべる人ばかりの中、デタラメに踊る人が1人。このままではただの変わり者で終わるところ。ところがもう1人、一緒に踊る人が現れ、周囲を誘い出したあたりから様子が一変。「踊らにゃ損、損」に空気が変わった。
【参考】日本が変わるスイッチが入っている映像 - 裸の男とリーダーシップ
(https://www.youtube.com/watch?v=OVfSaoT9mEM)