(篠原 信:農業研究者)
赤ちゃんを抱える多くのお母さんが、感じたことのある「不安」を、皆さんはご存知だろうか。
「赤ちゃんがあんまり泣いていると、虐待だと思われて通報されるかも」
私は、嫁さんがこの不安を感じていたと聞いてビックリした。嫁さんはかなり子どもあしらいがうまく、そんな不安とは無縁の人だと思っていたからだ。だが、たまに「あんまり泣くと、通報されちゃうよ」と語りかけていたのが気にはなっていた。
ある日、「なんでそんなこと言うの?」と尋ねると、「いまのお母さんは、たいがい感じている不安だと思うよ」と答えて、さらに驚いた。育児支援室に嫁さんは通っていたのだが、「赤ちゃんが泣くと通報されるかも」という恐怖は、お母さんたちの話題としてポピュラーだという。
ぜひ、厚生労働省、あるいはマスメディアの方たちは、次のようなアンケートをとっていただきたい。
「赤ん坊が泣いていると、虐待で通報されるかも、と感じたことはありますか」
身近な、赤ん坊を抱えているお母さんたちに聞いてみたが、みな「感じたことがある」という回答であった。どのくらいのお母さんたちがこの不安を抱えているのか、きちんと数字で把握したほうがよい問題だと思う。
お母さんが不安を抱く3つの理由
では、お母さんたちは、なぜそんな不安を抱くのだろうか? 大きく3つ、原因を挙げることができるだろう。
1つ。虐待の通報が激増していること。
児童相談所に寄せられる、虐待に関する通報は、平成29年度には13万件を突破し、さらに増加する勢いを見せている*1。子どもの出生数は、いまや100万人を切っているのだから、その数の多さがよく分かる。