空気を和らげる「潤滑油」に
声かけや変顔はハードルが高いなあ、という人には、もうひとつ方法がある。「ひよこボタン」だ。これは、NHK「あさイチ」という番組で、井ノ原快彦氏が提案したものだ。
電車や飛行機の中で、子どもがむずかると、母親は車内の皆さんに迷惑にならないように、泣き止ませようとオロオロしてしまう。そんなとき、「ひよこスイッチ」が設置されていたとしたら。
車内に「ピヨピヨ」という声が鳴り響くと、「全然大丈夫」「子供は泣くのが仕事」「どんどん泣いてかまわないよ」とのメッセージが込められている、というもの。この提案は当時、大反響を呼び、早速スマホで使える「ひよこボタン」というアプリまで登場した。
それから2年後、なんと、実際に「ひよこボタン」を使用した男性が現れた。混雑した電車内で赤ちゃんが泣き出し、困っていた母親がいたので、自分のスマホに「ひよこボタン」があったのを思い出し、「ピヨピヨ」と鳴らせたとか。すると、隣の紳士から「さっきからピヨピヨうるさいですぞ」と注意されたけれど、車内の人が笑ってくれて、空気が和らいだという。この様子がツイッターでつぶやかれ、トレンドワード入りした*1。
こうした「潤滑油」があると、お母さんたちは「一市民」の顔から「お母さん」の顔に戻れる。社会全体で子育てするんだよ、という空気を、こうした「潤滑油」でスムーズに形成できたら、と願っている。