これも、「自己実現したいことは何ですか? 働き甲斐を感じるには何が必要ですか?」という問いについて自問自答する余裕もなく、日常を回すマネジメントしか教えられてこなかった結果。まともな回答にならないのも仕方ありません。ただ、これでは「働き甲斐を感じろ」と言うほうが無理な話です。

働き甲斐は自分の資質と情報で醸成される

 では働き甲斐を実感できるようになるにはどうしたらよいのか? 私たちの中には、どんなに高い目標を達成しても、「まだまだ」と満たされない人もいれば、ほんの小さな出来事で満足し、心が充足している人もいます。その違いはどこから生じるのでしょうか。分岐点は2つあります。

 1つは他人の目を気にするか、しないかです。自分基準を持っていれば、本来、他人の評価は気になりませんが、人には「承認の欲求」があります。他人に認めてもらうことで自己肯定感を上げたいという心理はもちろんのこと、現実問題として他人から評価されないと昇給、昇進、ボーナスアップもないので、どうしても他人の目や基準を気にする圧力がかかるのです。こういうタイプの人は、「まだまだ」と考え、なかなか充足感を得られないのです。

 もう一つは、自己理解の不足です。周りがあなたを評価するポイントと、自分がどう見られたいかというポイントにズレがあったり、他人の評価の高さと自己評価の高さが違ったりすることはよくあることです。他人からの評価ポイントと高さが、自己評価のポイントと高さとに一致するようになれば、あなたの「働き甲斐」度数もアップします。そこで、この「目線合わせ」の方法を3つのステップで説明しましょう

ステップ1:欲求の背後にある自分の資質に気づく

 さまざまな欲求、自己実現したいことの9割は、実は本人の意思によるものではありません。「情報」と「資質」によるものです。

 たとえば5歳児に、「将来どんな大人になりたい?」と聞くと、「プリキュア!」とか「仮面ライダー!」なんていう答えが多く返ってきます。あるいは、「パパやママみたいになりたい!」なんていうものもあるでしょう。こうした答えが多く乗るのは、5歳児が持っている将来に対する情報のインプットがそのレベルしかないからです。

「三つ子の魂百まで」なんていう言葉がありますが、大学3年の就活生に同じ質問をしても「プリキュア」「仮面ライダー」などと答える人はいません。それは、キャリアに関する情報量が5歳児より増えて、キャリアに対する考え方が変わったからです。

 働き甲斐も同様です。育った環境や職場環境の中で「ライバルに勝ったら働き甲斐を感じる、目標を達成したら働き甲斐を感じる」などと刷り込まれた情報が、表向きの「働き甲斐」と理解されがちです。刷り込まれた情報に基づく「働き甲斐」からは、実は十分な充足感を得られません。資質は嘘をつきません。資質は遺伝子で半分、残りの半分は20歳過ぎで形成され、後に変わりにくいものです。資質に沿っていれば達成感や働き甲斐も感じます。

 働き甲斐の情報と資質にギャップがある場合、本音では働き甲斐を感じません。その差を埋めるには、自分の資質と欲求に対する情報を仕入れることで解決します。

 ムーギー・キムさんの『最高の生き方』(KADOKAWA)によると、自分の資質に直結する価値観などは無意識の領域の潜在意識に沁み込んでいるそうです。宗教、哲学といった幼少期からの環境の影響はもちろんのこと、人間がまだ動物だった頃に刻まれた影響も少なくないとのこと。蛙をみても平気な人と生理的に絶対NGなことがソレです。

「正しい理屈通りに結果を出しても、なんとなく違和感がある。達成感や働き甲斐をなぜか感じない」という思いの根本の原因はここにあります。この潜在意識に沁み込んだ大昔や幼少期からの刷り込みに気づき、解放することはできます。既に学問として整理されています。

 霊長類学、宗教学、哲学、心理学、脳科学などの視点から潜在意識に刷り込まれたらパターンを知れば対処することは簡単です。なぜか知らないけどモヤモヤが取れない人は、この本をペラペラとめくれば、そこに原因が情報として書いてあります。原因さえわかれば、モヤモヤを退治できます。

ステップ2:「ありがとうの声」と自己肯定感を直結させる

「働き甲斐は他人の評価と自己評価のポイントと高さの一致から生まれる」と解説しました。そのポイントは、他人の評価「ありがとう」の声で分かります。同じ事務の仕事でも「速くてありがとう」「正確でありがとう」「気が利いてありがとう」など、それぞれの人に寄せられる「ありがとう」の声は人により違います。この「ありがとう」の声が集まるポイントがあなたの資質なのです。その仕事に注力していけば、ラクに速くできる上、他人が評価するポイントになるため、無理なく働き甲斐に繋がります。
(参照:「ありふれたキャリア」から価値を見出す唯一のコツ https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53480)

ステップ3:既に実現できている自己を正しくしるには10段階で評価する

 次は、働き甲斐に繋がる他人と自己評価の高さの修正です。10段階で自己評価してみしょう。ステップ2までで可視化された働き甲斐に直結するポイントを「過去から現在まで10段階で何段階まできているか」を評価するのです。

 人はどうしても現時点とゴールまでのギャップに意識がいくので、いつも「足りない、足りない」という意識が働くので達成感や働き甲斐を感じにくいのです。富士山の頂上まで「雨風強い中、残り3合登らなくては」と思うとしんどいですが、「もう7合目まできた」と過去から現在まで進捗を客観視すれば、頑張ったな、だいぶ進んだと自信や達成感が芽生えるし、残りも乗り切ろうとモチベーションが湧くのと一緒です。

 次に現在からゴールまであと何点アップするかを決め、打ち手を考えます。7合目からいきなり頂上を目指すのがしんどければ、たどり着けそうな範囲でゴールを決め、打ち手を考えることです。8合目なら「あと1合登る」という自己評価の目線を正しくもてるので必要以上に卑下することもなくなります。自己評価が高すぎる時は適正ラインに是正できます。モチベーションも保てるので精神的にラクにもなります。

 この10段階で過去から現状を評価し、現状から次の一手を考えるというアプローチは組織開発やカウンセリング等で用いられる方法なので効果は保証できますし、簡単です。ぜひ一度10段階で達成度の棚卸をやってみてください。