また、天の川銀河の中心部が20年以上にわたって詳細に観察され、そこにある(が見えない)超巨大ブラックホールが、その圧倒的な重力によって周辺の恒星を引っ張り回している様子が明らかになっています。これも決定的証拠といっていいでしょう。
【参考】僕らはブラックホールの周りを回りながら暮らしてる
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47507
天の川銀河の中心にいる(が見えない)超巨大ブラックホールは「Sgr A*」という名がつけられています。「サジテリウス・エー・スター」だとか「サジ・エー」などと発音する人が多いです。「いて座の変な電波源」というような意味でつけられました。
超巨大ブラックホールSgr A*の質量は、太陽の400万倍と推定されています。まず太陽の質量というのが実感が湧かないほど莫大なのに、さらにその400万倍だとか数十億倍といわれましても、途方もなさ過ぎて意味がよく分からないというのが正直なところです。
こうして天文業界の数世代にわたる議論を経て、ブラックホールが存在することはほぼ定説となり、世間にも受け入れられたのですが、そうなると、ブラックホールそのもの、あるいはその近傍が写った写真が見たいと思うのは、世間も研究者も同様です。ブラックホールがばっちり写った写真があれば、「ブラックホールはほんとにあったんだ! チャンドラセカールは嘘つきじゃなかった*1」と誰もが納得するでしょう。
*1:1930年、19歳のスブラマニアン・チャンドラセカール(1910-1995)は、留学のために英国へ向かう船上で、量子力学と相対性理論を組み合わせ、「重すぎる白色矮星は重力崩壊を起こしてつぶれる」という計算結果を得る。この説は、天文学の重鎮の「星が点につぶれるような不自然なことが起きるはずがない」という大反対に遭う。これが「ブラックホールは存在するか」論争の始まり。
イベント・ホライズン・テレスコープの超高角度分解能
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イベント・ホライズン・テレスコープとは、世界6地点8台の電波望遠鏡を組み合わせ、1台の巨大・超高角度分解能の電波望遠鏡として用いるプロジェクトです。イベント・ホライズン・テレスコープをもって観測すれば、はるか遠くのM87やSgr A*近傍が手に取るように明らかになり、超巨大ブラックホールの姿が浮かび上がるという目論見(もくろみ)です。
このように複数のアンテナを1台の大きな電波望遠鏡として用いる手法を「電波干渉計」といいます。一般に望遠鏡というものは、レンズや鏡が大きいほど、角度分解能が高くなります。巨大な電波干渉計は(うまく行けば)超絶的な角度分解能を達成することができます。