2.北方領土への米軍の駐留の問題

 プーチン大統領は、歯舞、色丹2島を日本に引き渡した後に、当該領土へ米軍が配置されることを懸念し、米軍の当該領土への非配置を、交渉を進めるための前提条件として提示した。

(1)プーチン大統領の発言

 2018年12月20日、モスクワ市内で年末恒例の記者会見で次のように述べた。

 「プーチン大統領は、北方領土を日本に引き渡した場合に米軍が駐留する可能性を改めて懸念し、沖縄の基地問題を例に「日本にどのくらい主権があるのか分からない」と発言した。平和条約を心から締結したいとしながら、「(安全保障上の)問題への回答なしに我々は重要な決定を下せない」と語った」(日経新聞12月21日)。

(2)米軍の配置変更に関する事前協議

 米軍の日本国への配置における重要な変更は、1960年の日米安全保障条約改定の際の「条約第6条の実施に関する交換公文」に基づき事前協議の対象となっている。

 しかし、小規模の陸上部隊の配置の変更は事前協議の対象とはなっていない。

 以下、事前協議の法的根拠について、外務省の資料「日米安全保障条約(主要規定の解説)」 に基づき順を追って説明する。

●日米安全保障条約第6条

 米軍が日本に駐留する法的根拠は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(以下、日米安保条約)第6条である。

 第6条には次のように規定されている。

 「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」

 「前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952年2月28日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される」

 第6条前段は、我が国の米国に対する施設・区域の提供義務を規定するとともに、提供された施設・区域の米軍による使用目的を定めたものである。

 第6条後段は、施設・区域の使用に関連する具体的事項及び我が国における駐留米軍の法的地位に関しては、日米間の別個の協定によるべき旨を定めている。

 なお、施設・区域の使用および駐留米軍の地位を規律する別個の協定は、いわゆる日米地位協定である。

 米軍による施設・区域の使用に関しては、「条約第6条の実施に関する交換公文」(いわゆる「岸・ハーター交換公文」)が存在する。