今日でも箸の長さにこの咫が使用され、「一咫半(ひとあたはん)」が子供にも大人にも最適の長さとされ、融通無碍で万能である。

 大人の箸は○センチ、子供の箸は△センチと固定した表現をしようものなら、クレーム好きな人からは、「大人や子供といっても身長はバラバラで、いったいどこを基準にするんだ!」と、罵声が飛んできそうである。

 そうした煩雑を避け、夫々の身長に応じた「一咫半」は素晴らしい表現法であり、昔の人の英知そのものではないだろうか。単純であるが合理的かつ柔軟性に富む尺度である。

 憲法は前文を含め全面改正(真摯な議論の結果、そのままという選択もあり得る)が理想的であろうが、安倍首相はTPOを考えて9条を含む僅かな項目だけに絞った。

 子供の短い箸に相当するものであり、成長(すなわち国際情勢の変化)に伴ってさらに長い箸が必要となるが、その時は新しい一咫半の箸を準備すればよい。

 これこそが、日本に伝わる一咫半の英知ではないだろうか。

おわりに

 同じ敗戦国のドイツやイタリアでは、同国での米軍のすべての行動に独伊軍が関与する。

 同国内の米軍事故などの調査においても然りである。独立国としての地位協定を結んでいるからである。

 日本と独伊の違いは、安全保障の米国への依存度で、日本は安全を米国に依存して半保護国に甘んじている状況である。

 地位協定(大本は安保条約)の改定のためにも、日本が完全な独立国家となる必要があり、その第1要件は不法に侵入してくる敵性勢力を排除する戦力の保持である。

 岩倉具視を団長とする遣米欧使節団が不平等条約の改定に失敗し、その後40年を要した教訓(独立国家を顕示する姿や法体制など)をいまこそ生かす知恵が必要ではないだろうか。