安倍晋三首相の訪中に先立つ4日前に、筆者は「透ける本音:なぜ中国は安倍首相訪中を促したか 中露の焦りは日本の主張を通すチャンス、明確に言うことが大切」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54423)を掲載した。
掲載時の「記事ランキング」で上位を維持し続けたのは、中国の反日や覇権志向に安倍首相がいかに対処するか関心が高かったからであろう。
総じて、戦後の日本は媚中外交を展開し、ODA(政府開発援助)に見たように徹底的に利用され、今日の軍事強国に心ならずも貢献してきた。
いままた、一帯一路で新植民地主義に走りつつある習近平政権である。その路線にストップをかけ、共生する国際社会に転換させる役割を、地球儀外交で世界を俯瞰してきた安倍政権に国民が期待した面もあろう。
産経新聞は「『覇権』阻む意思が見えぬ 誤ったメッセージを与えた」と厳しい総括をしたが、他の全国紙は「安定した関係構築の第一歩に(読売新聞)」「新たな関係への一歩に(朝日新聞)」など、関係改善への期待を示した。
媚中外交の是正なるか否か。筆者も注文を出した手前、成果を総括する義務があろう。
3原則に対する認識問題
安倍首相が中国の首脳との間で確認したとする「競争から協調へ」「隣国同士として互いに脅威にならない」「自由で公正な貿易体制を発展させる」について、双方に認識の違いがあるのではないかという問題が浮上している。
首相は李克強首相および習近平国家主席との会談でこの文言に触れ、「日中関係を発展させていきたい」(対李首相)、「日中の新たな時代を切り開いていきたい」(対習主席)と発言したのに対し、中国側は「首相の表明を歓迎する」と表明したが「3原則」の文言を使わなかったとされる。
官邸のフェイスブックやテレビ・インタビューで安倍首相は(李首相や習主席と3原則を)「確認した」としているが、取材が許された首脳会談の冒頭発言や共同記者会見では「競争から協調へ」などのフレーズを使って原則に言及するが、「3原則」という用語は使わなかったようだ。
中国外務省も今回の会談で、習氏は「共同でグローバルな挑戦に対処し、多国間主義を維持し、自由貿易を堅持しよう」と発言し、また「『互いに協力のパートナーであり、互いの脅威とならない』という政治的合意を貫徹しなければならない」とも述べたと発表しただけである。
最初に報道したのは、10月28日付「読売新聞」朝刊である。「日中『3原則』食い違い」「首脳会談 首相『確認』、中国は触れず」と、ゴシック体の2行見出しをつけ、リードでは「安倍首相が中国の習近平国家主席と『確認した』とする『3つの原則』を巡り、日中で微妙な食い違いが生じている」と書いた。