そこで首相は、半保護国脱出の肝である自衛隊の「合憲化」を提議した。ただ、改正に必要な議員の賛同を得るため、教育無償化や非常時条項などの数項目が加味されたのだ。
尖閣は日米安保の適用範囲か
多くの日本人は、同盟国の米国が一意的に「日本を守ってくれる」と勘違いしてきた。
日米安保が機能するのは「有事」でしかないし、また日本が自ら自国を守る努力をしなければ、米政府も自国民や議会を説得できないことは火を見るより明らかである。
さらに、日本の政府や国民が米政府高官から引き出してきた「尖閣は日米安保の適用範囲」という文言は、正確には「〝日本が施政権を有する″尖閣」であり、尖閣の施政権が明確でなくなれば、米国の支援は期待できない。
施政権の維持の観点からは、海上保安庁の巡視船が監視を続ける一方で、接近拒否などの自衛隊の行動が、憲法をはじめとした法体制で保証されなければならない。
東シナ海におけるグレーゾーン対処では、手続きの迅速化が図られたが、果たしてそれで尖閣が守れるか。
一端相手の勢力下になり施政権が混沌となれば、日米安保の適用ができない危険性もある。
議員1人に年間約1億円の経費
「あるべき姿」からの理想ばかりを語っていては、明日起きるかもしれない想定外の事象に対応できない。
政治家の任務はそうした想定外にも柔軟に対応し、国家と国民を守ることではないだろうか。
そこで、安倍氏は批判や反対があることを承知で、当初は自民党総裁として、次いで首相として僅かな字句の追加による「憲法改正」を提言し、審議の場に持ち出したのだ。