こんにちは、人事戦略コンサルタントの松本利明です。PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社などで24年以上、人事と働き方の改革を行ってくる中で「おやっ!?」と思ってしまうことが実に多く発生してきました。

 実は、世間で言われる「セオリー」の9割が間違っているのです。思ったような効果が出ないのは、計算ミスより計算式そのものが間違っているのです。うすうす、あなたも気づいているのではないでしょうか?

 そこで前回(「コンサル仕様の最強コミュニケーションツールを学べ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54270)に引き続き、「働き方改革」のセオリーにありがちな落とし穴と、それに代わる速くラクに成功するコツについて解説していきます。

「洞察」の中身は実は2つある

 部下や上司、同僚や取引先などとのコミュニケーションにおいて、「わかった」「伝わった」と思ったのに、相手がこちらの意図と違う行動に出てしまうということがビジネスの世界ではよくあります。なぜこうしたことが起こってしまうのでしょうか? 相手に寄り添いながら、論理的に、わかりやすく、具体的に伝えなかったからでしょうか。そうではありません。

 根本的な原因は、「どうなりそうか?」という”読み”や”落としどころ”が合っていないことにあるのです。

 ”読み”や”落としどころ”は、実際の会話や文章の中では省略されがちだと前回の記事でも解説しました。

 そこで今回は、一歩踏み込んで、”読み”や”落としどころ”を簡単にすり合わせるにはどうすればいいかについて、お話しをしましょう。

 前回解説した「ソラ・アメ・カサ」の要素を詳しく解説したのが【図1】です。

「ソラ・アメ・カサ」とは、

・ソラ「空を見ると曇ってきた」=事実

・アメ「雨が降りそうだ」=解釈

・カサ「傘を持っていこう」=判断

 という構造の思考のフレームワークでした。

【図1】ソラ・アメ・カサの切り口と入れるもの
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 ソラは「事実(ファクト)」です。例えば「今年の8月の平均気温は35度」という意見や解釈が入っていない客観的な事実(ファクト。「暑かった」などは解釈が入った意見や感想なのでソラには入りません)と、実施している打ち手とその結果などの事実(ファクト)が該当します。

 アメは「解釈」で、「洞察(どうなりそうか?)」と「分析(乗り越える壁〔課題〕と検討の方向〔論点〕)」の2つの側面を持っています。

 いくら解釈とはいえ根拠がなければただの「思いつき」でしかありません。「思いつき」はどんなにスジがよさそうでも結果を検証することができないのでPDCAのサイクルを回せず、思いつき&Doを繰り返す無限地獄に陥りかねません。この“思いつき連合”をソラ・アメ・カサで示すことで阻止しましょう。