さらば硬いイクラ! 通電加熱が水産食品を変える

「鮭の卵」への眼差し(前篇)

2018.09.24(Mon)漆原 次郎
イクラを特定の方法で加熱することにより、硬化を抑えるなどの品質向上を見込めるという。

 多くの日本人が好んで食べる「鮭の卵」、つまりイクラや筋子に光を当てている。前篇では、鮭の獲れる日本の地域では昔から筋子などが食べられてきたこと、また、近代にロシアから加工技術が入ってきたのを機に、イクラが日本食の1つとなっていった歩みなどを追った。

 後篇では、イクラに向けられた現代の食品加工技術を伝えたい。水産物に直接電気を通して加熱する「通電加熱」という技術がイクラにも使われ、硬くなりにくい高品質のイクラが作られ始めているのだ。研究プロジェクトで取りまとめ役を務めた、東京海洋大学教授の岡﨑惠美子氏と、実際の研究を進めた、岩手県水産技術センター上席専門研究員の上田智広氏に話を聞いた。

かまぼこの通電加熱は1980年代から

 食品に熱を加えるとき、煮たり、蒸したり、焼いたりする。その目的は、軟らかくする、風味を高める、殺菌するなどさまざまだ。

「通電加熱」も食品に熱を加えるための方法の1つ。ただし、煮る、蒸す、焼くなどの外部から熱を与える方法と違い、通電加熱では食材そのものに電気を通し、自ら熱を生じさせる。電熱コンロのニクロム線のところを食材で置き換えたような仕組みと考えればよい。これで食材を瞬時に、そしてより均一に加熱することができる。

 食品を温めるのに電子レンジもよく使われる。これは、マイクロ波という電波を当てて食品内の水分子を振動させ、通電加熱と同じように内部から熱を生じさせる方式だ。ただし、加熱ムラを抑えられるという点では通電加熱に利点がある。

 食品を加工するとき、さまざまな目的で熱が使われる。通電加熱の用途も、さまざま考えられる。

 水産加工食品に対しては、かまぼこ製造でかねてから通電加熱が使われてきた。かまぼこをダレさせず弾力ある状態にするには、一気に加熱すべき高温度帯がある。加えて、かまぼこは「練りもの」であるため肉や骨の区分なく加熱がより均一化しやすい点、また、塩分が含まれるため通電しやすい点なども、通電加熱に向いている。こうしたことから、すでに1986年にはかまぼこ向けの通電加熱技術が確立されていた。その後、練りものについては、ちくわやカニかまなどでも通電加熱が使われてきた。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る