しかも、経済的に豊かになって、中国人が外国の製品・サービスや企業を普通に買えるようになってからはまだ10年も経っていない。

 この短期間に外国人との相互理解、相互信頼の大切さを理解する見識やセンスを十分身につけることはできない。

 中国人経営者は急速に高まった経済力とそれに追いつかない外国経済社会や文化を尊重する見識やセンスの間のギャップを埋められない構造問題に直面している。

5.日本へのインプリケーション

 均一な視点や発想からは創造的な考え方は生まれない。

 全く異なるものの見方をする人々が集まり、互いに相手の異なる見方を尊重し刺激を及ぼし合う時にそこに新たな創造的発想が生まれる。

 その大前提は相互理解と相互信頼である。安心して相手と交流ができる時に互いの実力が思う存分発揮される。その相互作用が創造的考え方を生み出す「場」を形成する。

 日本は明治維新以後、欧米諸国を中心に相互理解と相互信頼の醸成に努めてきた。

 元々日本には異文化を許容する文化的包容力があり、古来、儒教、道教、仏教、禅が神道とともに共存する形で日本社会の中に根づいてきた。

 現代においても、結婚式はキリスト教、葬式は仏教、初詣は神道、道徳観は儒教というのはごく当たり前のこととして日本社会に根づいている。