このような欧州における中国企業に対する警戒感は中国という国の脅威の高まりと重なり、欧州諸国の中国観の土台となっている。
欧州諸国の有識者はトランプ政権の貿易摩擦の手法に対しては極めて批判的であるが、米国の中国脅威論は共有している。
このため中国政府の外国企業に対する技術強制移転政策に対する批判や中国製造2025に対する警戒感は米欧の間で一致している。
4.背景に外国人の感情に対する理解不足
以上のように欧州でも様々な問題を引き起こしている中国企業であるが、筆者の推測では、多くの場合、中国人経営者にそれほど悪気はない。
しかし、一部の急速に豊かになった中国人経営者は外国で経済活動を行う場合、外国の文化を尊重することが大切であるという見識やセンスを十分身につけていない。
異なる経済文化基盤や経済発展段階に属する外国人の気持ちを配慮して行動する意識が不足している。
これはグローバル社会で外国人と円滑に経済文化交流を進めるうえでの必須条件であるが、その習得には長時間かかる。
多くの中国人が外国人と接触し、相互理解と相互信頼の大切さを学び始めたのはつい最近である。
以前の中国には唐代の長安のような国際都市があったが、その後の歴史の中でその時の知見は失われ、さらに1949年の中華人民共和国建国から30年程度の間は実質的な鎖国状態が続いた。
改革開放政策が始まった1980年代から徐々に開国し、本格的に先進国との経済交流が始まったのはWTO(世界貿易機関)に加盟した2000年以降である。