このような事件が相次いで発生したことから、フランス国民の間には中国企業のフランス進出に対する警戒感が広まっている。

 中国企業は莫大な資金を持っているため、気軽に海外で企業買収を行うが、相手国に対する配慮の不足が様々な問題を引き起こしている。

3.ドイツ人の警戒感はさらに強い

 ドイツの状況はさらに深刻である。

 2015年頃から中国企業によるドイツ企業の買収が相次ぎ、2016年にはついにドイツを代表する老舗機械メーカーKUKAが中国の家電メーカーを母体とする美的集団に買収された。

 それを機にドイツ経済界には中国警戒感が一気に高まり、ドイツ企業の対中投資姿勢は急速に冷めた。

 それに加えて、昨年11月には、中国の自動車メーカー吉利がダイムラーに対して資本・技術提携を打診したため、ダイムラーは拒絶した。

 しかし、吉利は本年2月にダイムラーの株式の約10%を取得したことを発表した。これがドイツ企業経営者等の中国の脅威に対する懸念を一段と強めることになった。

 中国市場ですでに巨額の利益を確保しているいくつかの企業を除き、多くのドイツ企業は対中投資に対して極めて慎重になっている。

 2016年には27億ドルに達したドイツ企業の対中直接投資総額が、今年は1~7月の実績を年率換算すると9億ドルに達しない状況であり、2年間で3分の1にまで減少する可能性がある。

 この減少テンポは尖閣問題後の日本企業の対中投資減少の速度以上に急速である(日本企業の対中直接投資額:13年71億ドル、15年32億ドル)。