軍票は大東亜戦争中の日本軍政下のもの、アウンサン将軍のお札はビルマ独立後に発行され流通していたものだが、これだけまとまって入手できる機会はなかなかない。というのも、軍政時代にはアウンサン将軍のお札の発行が消えていったからだ。軍政当局は、民主化指導者アウンサンスーチーを連想させるとして、アウンサン将軍の肖像画は前面に出さないようにしていた。
自分にとって軍票は見るのも実際に手で触るのも初めてだし、アウンサン将軍のお札もこれだけバラエティがあるとは知らなかった。価格交渉のうえ全部まとめて現金12米ドルで買い取ることにした。コレクターではないので高いか安いかは分からないが、即断即決である。
帝国陸軍がビルマで軍政を敷いていたのは、1942年から1945年までの3年強に過ぎない。日本が敗戦する前にイギリス(大英帝国)軍が再び戻ってきたこともあり、軍票は文字通り紙くずとなってしまった。ところが、それから70年以上たったいまでも軍票が出てくるのだ。
ちなみに、1948年のビルマ独立後の通貨単位はチャット(kyat)だが、ミャンマーでは現在に至るまで過去3回にわたって流通紙幣を廃止する「廃貨」が行われている。おそらくミャンマー全土に、使用停止となって無価値となった軍票やチャット札が、まだまだ持ち主も知らぬまま死蔵されているのではないだろうか。
軍票とアウンサン将軍のお札から見えてくるもの
日本にとって「先の大戦」は、米国と戦った「太平洋戦争」だけではない。無謀な作戦で多くの死傷者を出した「インパール作戦」も含め、大日本帝国と大英帝国はビルマで激突したのである。
大日本帝国政府がビルマで発行した軍票と、「ビルマ独立の父」であるアウンサン将軍が描かれた紙幣。この2種類の紙幣から見えてくるものは、ビルマ(=ミャンマー)をめぐっての日本と英国の、けっして一筋縄ではいかない複雑な関係の歴史である。