だが、日本政府が肩入れしていた独裁者ネ・ウィン時代に採用された「ビルマ式社会主義」の結果、経済成長が実現できなかったことはビルマにとっては不幸なことであった。第二次世界大戦後の時点では、ビルマの生活水準は敗戦国日本より上回っていたし、国連の第3代事務総長はビルマ出身のウ・タント氏であっただけに残念なことなのである。その後の軍政時代については、あえて書くまでもなかろう。
現時点から見れば、独立後のビルマ(=ミャンマー)は、実現した可能性が大きかったにもかかわらず、実現しなかったことがきわめて多い。だが、逆に見れば現在のミャンマーのもつポテンシャルが大きなものであることの裏返しであるといえる。それは経済関係だけにとどまらない。
ミャンマーを軸にした日英関係強化の可能性も
2010年以降に実現した「民主化」以降のミャンマーでは、「アジア最後のフロンティア」と見なす日本からのアプローチだけでなく、旧宗主国の英国も着々と関係改善に向けて動き出している。ミャンマーの英連邦入りが実現する可能性もある。
ミャンマーは、現在のところ日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)には加盟していないが、将来的には加盟の可能性があるかもしれない。そして、「Brexit(ブレグジット)」後の英国は、7月6日にTPP参加意向を基本方針として正式に閣議決定している。EU離脱後の世界をにらみ、アジア太平洋地域の経済成長地域に活路を見出そうとしているからだ。もしこれら一連の動きがすべて実現するならば、ミャンマーを舞台にして、日英両国の関係が強化されることにつながる。
大東亜戦争終結からすでに70年以上も経っているのである。日英ともに戦争を直接体験している世代は後景に退いている。日本と英国は大いに協力関係を構築すべきであり、ミャンマーはその舞台として、象徴的な意味をもつ可能性があるのではないだろうか。激変し流動化する国際情勢においては、少しでも未来につながる動きを手探りであっても探っていかなくてはならない。