小嶋の太陽光発電は、原子力政策を推し進めようとする国への抗議の意味もあった。今後も発電施設は増やしていく予定で、すでに茨城で2つ、千葉で3つ、土地を取得している。
「新しく作るところも自分たちで組み立てます。業者に頼んで作ってもらうこともできますけど、コストや管理を考えると自分たちでやったほうがいいんです。まぁ『65の手習い』で1カ月かけてようやく1つ作りましたけど、これからはもう少し早く作れるようになると思いますね」
小嶋は自ら運転する車で、茨城や千葉の発電施設や取得した用地を案内してくれた。その道すがら、生い立ちから現在の境遇までつれづれに語ってくれたが、その中でたびたび小嶋が口にしたのが「犯罪者」という単語だった。耐震偽装事件で、裸一貫から築いた会社や財産を失ったことよりも、「詐欺罪」に問われ有罪判決を受けたことが我慢ならない、という口ぶりだった。
昨年末、小嶋が会社の取締役に名を連ねたことはすでに触れたが、そのことで「犯罪者がいる会社とは付き合えない」と取引を断ってきた会社があったという。故郷の高校の同窓会に出席してみても、まだ小嶋と口を利こうとしない者もいる。
「今でも世の中の人の9分9厘は、小嶋進は悪いことをした人間、という認識だと思います。
堀江貴文さんとか佐藤優さんなんかは、かつて国策捜査みたいな形で検察によって逮捕されたことがありますけど、ものすごい発信力があって、今は言論界で活躍しているじゃないですか。堀江さんや佐藤さんのことを犯罪者だなんて思っている人はもういないですよね。それに比べると、僕は発信力もないから・・・」
確かに小嶋には、堀江や佐藤のような言葉を使っての発信力はないかもしれない。しかし、太陽光発電所をコツコツ作り続ける行為には違った意味の発信力があるのではないか。
耐震偽装事件から13年。着せられた濡れ衣を振り払うために、今も小嶋は闘っていた。 (文中敬称略)