現在はクイックウェブの代表取締役を務める西久保愼一・元スカイマーク社長

「今にして思えば、当時の僕は完全に裸の王様でした」

 かつてスカイマークのトップにして、「ワンマン社長」「カリスマ経営者」「業界の異端児」などと呼ばれた西久保愼一氏がこうつぶやいた。

 赤字続きで債務超過に陥っていた同社に、個人資産と自ら経営する会社の資産、合わせて100億円ほどの資金をつぎ込み、弛緩した社内の引き締めと業務の効率化を進め、ついには年間150億円もの利益を叩き出すまで立て直した実績を持つ剛腕経営者が漏らした言葉は、スカイマーク時代に見せていたエネルギッシュな姿からは想像し難いものだった。

 西久保氏はどこで経営の舵取りを誤ったのか。スカイマークの破綻・自身の社長退任(2015年1月)から3年半。これまでメディアの取材にほとんど応じてこなかった西久保氏に改めて聞いてみた。

ネットバブルの波に乗りIT長者に

 大学卒業後、サラリーマンとなった西久保氏は、趣味が高じてパソコンソフトの開発会社を立ち上げた。1985年のことだ。その後、取引先がプロバイダー事業を廃業することを知り、この事業を買収。このマスターネットは西久保氏が新たなサービスを打ち出すと急成長し、1997年には店頭市場に株式公開、2000年にはナスダックに上場するに至った。これによって「IT長者」となった西久保氏だが、同時に大きな悩みを抱えることになったという。

「マスターネットが上場したのは、ちょうどネットバブルの時で、本来の企業価値以上の評価を市場から得ました。うらやましいと思う人もいるかもしれませんが、それまで普通の生活をしてきたのに、ある日突然、100億円単位の金が舞い込んできたわけです。そういう人生は想定していなかったので、正直、参ったなと思いました。

 株を公開した以上、不特定多数の株主から預かっているお金はだらだら減らすわけにもいかない。より有効で、社会的にも意義があることに使わなきゃいけない義務が生じました。

 個人資産についても、一生かかっても使いきれる額じゃなかった。もしも僕がポックリ逝ってしまったら、絶対に親族でもめ事が起きます。

 だから、会社の資産にしても自分の個人資産にしても、いい使い道はないものかとずっと思い悩んでいたんです」