民事再生手続きの申請から数日後、スカイマークの株にはまだ30円前後の値がついていた。西久保は保有していた株式をすべて売却した。手元に戻ってきたのは、同社に投じた資金のおよそ10分の1だったという。

「あいつは大損こいた、とみんな思うかもしれませんが、どうせ持っていても使い道のない金です。もちろん結果に満足しているわけではないですが、減って悲しいというものでもないですよ。

 ただ経営に失敗したことについては、しばらくウジウジ考えていましたね。最後は自分の思い通りにならないことが多くて、自分自身、なんだか分からない終わり方をしてしまって・・・。自分自身に能力がなかったということに、自分で失望していたんです。後から考えれば、『ああいうやり方もあったな』と思うこともあるんですが、走っている最中はなかなか分からないものですね」

「新規開業する人たちの役に立ちたい」

 スカイマークを離れてからはどうしていたのか。

「すぐに会社を作りました。スカイマークにタッチする前に思いついていた事業プランがあったので、じゃあそれでもやろうかなと」

 西久保氏が立ち上げたのは、月300円の利用料金で簡単にホームページが作れるサービスを提供する「クイックウェブ」(https://qwc.jp/)という会社だ。

「新しくお店を開いた人なんかは、ホームページを作るために20万~30万円もかけられないじゃないですか。でも月300円でこのサービスを使えば、自分で簡単に作れます。新しく商売を始める方たちへの支援にはなると思いますね。たいして儲からなくてもいいので、何か世の中の人たちの役立つことをしたいなと思っています。

 今の会社を大きくしようとは思いません。適度な規模で継続していければいいなと。数字に追われて仕事をするのはこりごりですから」

 改めて今、スカイマーク時代を振り返ってどう感じているのか尋ねてみた。

「一生懸命やってはいましたが、会社が上手く回り始めた時点で離れるべきでした。会社を立て直して、5年くらいで退けばよかった。その間に、後を引き継いでくれる人材を一生懸命探すべきでした。

 それができなかったために、株主の方には本当に迷惑をかけてしまった」

 経営者は結果で判断される。経営破綻を招いた西久保の経営責任は、もちろん大きい。だが、莫大な個人資産を差し出して経営にあたり、倒産寸前の会社を、一時は見事に再建してみせた。それも事実だ。

 それでも本人は、「自分はその器ではなかった」とスカイマーク時代を総括した。150億円の利益を出した当時の西久保を取材し、そのパワフルな言動に魅了されたことのある筆者にとって、この言葉は重く響いた。(文中敬称略)