(文:上昌広)
私が主宰する「医療ガバナンス研究所」と調査報道メディア『ワセダクロニクル』は、製薬企業から医師に渡っている金銭について共同調査を行っている。
昨年9月にスタートし、製薬企業の業界団体である「日本製薬工業協会(以下、製薬協)」に加盟する71社が、2016年度に医師個人へ支払った講師謝金、コンサルタント料、原稿料(製薬業界では、このような費用を「C項目」と呼ぶ)を集計、分析中だ。
中心となって調査を進めているのは、『ワセダクロニクル』の渡辺周編集長と「医療ガバナンス研究所」のスタッフである尾崎章彦医師。2人とも製薬企業とは浅からぬ因縁がある。
製薬企業の抗議に屈した朝日新聞
渡辺氏はもともと朝日新聞の記者だった。2015年4月1日、朝日新聞は朝刊1面トップに「医師に謝礼、1000万円超184人 製薬会社、講演料など 13年度分、朝日新聞集計」という記事を掲載した。ご記憶の方も多いだろう。この調査報道をリードしたのが渡辺氏だ。
翌2日には「公表、医師抵抗で1年遅れ 製薬会社からの講演・原稿料 印刷できず閲覧期間制限」という続報を出したが、記事が掲載されたのは、ここまでだった。
当時、製薬協の職員をしていた私の知人は、「製薬企業が朝日新聞に抗議し、広告を引き上げるとちらつかせたのです」と言う。
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