所得主導成長論どころではない。最低賃金で働く従業員同士で「雇用」の奪い合いが起き、全体として雇用は減少してしまった。
雇用情勢ははっきりと悪化
政府が発表する「雇用統計」から最低賃金大幅引き上げの影響がはっきりと読み取れる。
2015年から2017年までの3年間、1か月平均の「就業者増加数」はだいたい30万人だった。ところが、2018年の1~6月の平均は「14万2000人」と半減してしまった。
業種別に見ると、「卸小売業」「宿泊飲食業」「施設管理業」で就業者数が大幅に減少している。
「いずれも最低賃金で働く就業者が多い業種で、1月の最低賃金引き上げ後、職を失う例が多かった影響だ」(韓国紙デスク)という。
「雇用拡大」「格差縮小」を掲げてきた文在寅政権としては放置できない数字だ。政府内でも「最低賃の引き上げ速度を調整すべきだ」という声が強まった。
一方で、労組などは「約束履行」を迫る。
そんな板ばさみのなかで、「2018年の16.4%引き上げよりは小幅だが、2桁引き上げは維持する」という線で決着したようだ。
それでも、経済成長率や物価上昇率と比較しても最低賃金の引き上げ幅が突出して高いことは確かだ。