ところが、票決でこれが否決されると、経営者側委員9人全員が会議をボイコットしてしまった。「委員会の構成があまりに労組寄り過ぎる」という不満からだ。

 また、労組側委員の中でも「2020年1万ウォン」という公約に強くこだわる強硬派の民主労総系の委員4人も会議をボイコットした。

 結局、残りの「公益委員」9人と労組側委員5人が、様々な意見を検討しながら議論を重ねた。最後は、14人で採決の結果、10.9%の引き上げが決まった。

所得主導成長論

 文在寅政権は、大企業や財閥主導で経済のパイ全体を拡大させることを目指したこれまでの政権の経済政策とは一線を画した「所得主導成長論」を掲げている。

 その目玉が「2020年までに最低賃金を1万ウォンに引き上げる」という公約だった。2018年の最低賃金を一気に16.4%も引き上げたのもこのためだった。

 「賃上げ→消費拡大→企業業績向上→投資拡大」 こういうサイクルを目論んでいた。

 ところが、経済は生き物だ。そう簡単には進まなかった。現実は全く違う方向で動いてしまったのだ。

 最低賃金が一気に上昇したことに雇用主はどう対応したのか?

 「じっと我慢」したのか?

 そんなはずがない。人件費を抑えるため「雇用削減」に相次いで踏み切ったのだ。大幅に引き上げられた「最低賃金」を守るために、雇用する従業員を1人、2人と減らすことで対応したのだ。