「時間あたりの生産性向上」は、働き方改革の1丁目1番地

 「社員の働く時間を減らすと、仕事が停滞し、生産性(生産量)が下がる。国は経済成長を目指すと言いつつ、企業経営を圧迫するのか」という経営者の声が聞こえる。

 しかし、法律で「上限」が設定される以上、企業は従わなくてはいけない。「仕事が多い時期は残業して乗り越える」ことができなくなる。

 これまでより短い時間で、これまでと同等、いやそれ以上のアウトプットを出さなくてはいけない。目指す方向は、「時間あたりの生産性向上」だ。

 業務のIT化、効率化、時間削減は、本来、取り組むべきことである。「法律による上限」により、ようやく日本の企業が正しい方向に動き始めたと言っていいかもしれない。

 会議時間の短縮、ウエブ会議による出張の削減から、RPAの導入、いかに少ない人数で、いかに効率よく、いかにコストを抑えて業務をすすめるか。

 「長時間労働の是正」は、労働者のワーク・ライフ・バランスの向上であることはもちろんだが、企業のシェイプアップの大きなトリガーではないかと、筆者は考えている。

制約社員が働き続ける体制を整えないと追いつかない

 しかし日本の「働き方改革」を成功させるには、まだ課題がある。若い世代では「育児休業中」や「短時間勤務中」の社員割合が増え、管理職世代では「介護離職」をする社員が増えていく。

 つまり、企業における「労働時間」が、減り続け、時間あたりの生産性を高めるだけでは、追いつかなくなる。

 ある大企業では、常時、育児休業中の社員が数百人いて、年々増え続けているという。そして休業復帰後も、大半が短時間勤務となる。また親の介護で離職する社員も増え始めた。少子高齢化社会において、こちらも数が増えていく。

 そこで重要になるのが「制約社員の労働参加率の向上」だ。