社員一人ひとりの生産性を高めることに成功しても、その社員が働きにくい状況(制約社員)になったり、離職することになったりしては、元も子もない。

 今後は、新しい社員を採用するにも、人手不足が続く中、多大なコストがかかることになる。

 いかに、制約社員が働き続けるしくみや体制を作るかも、「働き方改革」を成功させる重要な要素となる。

景気の波・繁閑の差を乗り越えるための労働力平準化

 さらにもう1つ大きな課題がある。残業が当たり前だったあの時代のように、景気が右肩上がりとは限らないのだ。

 社員の雇用を増やし続けた結果、バブル崩壊やリーマンショックでリストラや採用制限をした結果、今、社員の年代不均衡という事態を招いている。

 これからの企業は、最適な社員数で、景気の波、繁閑の差を乗り越えられることを目指さなくてはいけない。

 忙しい時期は、外部発注や、外部の労働力をできる限り活用する。国は副業・兼業を推進している。これは、日本の労働力全体の平準化を目指しているからと私は想像している。

働き方改革を成功に導く「テレワーク」

 まとめよう。国が進める働き方改革は、「残業削減」だけではない。

 「長時間労働の上限」の法律化は、人手不足、制約社員の増加、東京集中など、日本の労働環境課題に対して、企業を動かすトリガーであると筆者は考えている。

 そのトリガーにより、企業は「時間あたりの生産性向上」に取り組んでいるが、それだけでは、働き方改革は成功しない。同時に「制約社員の労働参加率の向上」「繁閑対応体制の構築」に取り組む必要がある。