「セキュアAIの分野はブルーオーシャン。海外に出ても十分に勝負できる」と話すEAGLYSの今林広樹代表取締役社長

「セキュリティ技術を伴うことで初めて、人工知能(AI)の活用は広がる。別の言い方をすれば、セキュリティがしっかり担保されなければ、AI活用は加速しない」。

 こう言い切るのは、「AIモンスター」として知られる今林広樹氏である。AI(人工知能)に関する深い知識と高い技術力を兼ね備えたプロフェッショナルはAIモンスターと呼ばれることがあり、今林氏もその一人だ。今林氏が2016年12月に設立したEAGLYS(イーグリス)は、「AIモンスターのベンチャー」として多くの企業から注目を集めている。

 EAGLYSには毎週、AIを活用したい企業から新たな相談が多数寄せられる。昨年8月の初受注以来、常に複数のAI関連プロジェクトが進行する状態が続いており、現在も3~4件が並行して走っている。25歳のAIモンスターを頼る依頼主は、これまでに完了した数件のプロジェクトを含め、いずれも誰もが知るような大手企業ばかりだ。

 不動産の価格査定、営業先リストの作成と競合企業の調査、電力需要の予測、Webメディアのリコメンド――。EAGLYSは、依頼主の目的に合わせ、さまざまな業種や業務に特化したAIモデルを開発して提供する。

 創業間もないベンチャーのEAGLYSに、大手企業からの引き合いが相次ぐ大きな理由の一つが、「セキュアAI」と呼ぶ同社の技術である。データを暗号化した状態のままで解析したりアクセス権を付与したりできる「高機能暗号」と、AIを融合させたものだ。

 セキュアAIでは、依頼主が保有する機密性が高い業務データや顧客データを暗号化してクラウドに集約し、復号せず秘匿性を保ったまま機械学習(マシンラーニング)や深層学習(ディープラーニング)のデータとして用いる。安全に扱わなければならない機密情報を利用できるので、より適切で有用なモデルが得られるという。