これでは本当の意味でのユーザーの嗜好は分かりません。Webページに書かれた内容や閲覧の時系列まで把握しなければ、ユーザーに最終的な意思決定をもたらした情報を特定できないからです。

 V.I.K.I.のレコメンドエンジンは、自然言語解析によって、Webページに書かれた内容を解析します。さらに閲覧履歴を基に、どういった言葉を含むWebページをどの順番で遷移したかなどを機械学習し、ユーザーの嗜好を高い精度で突き止めていきます。

休学して渡米した“聖地”での人脈を生かす

――MyneeのAIエンジンの開発で協働しているロサンゼルスの企業とは?

今林 ビッグデータ解析やレコメンドエンジンに強い会社で、このところAIにも力を注いでいます。

――何らかの伝手があった?

今林 技術をビジネスにつなげるプロセスが学べるかもしれない。そんな期待もあって修士課程1年の途中で休学し、データサイエンティストとして米シリコンバレーの会社に勤務しました。そのときの人脈を生かして、共同開発の体制を築いています。

――ベンチャーの聖地を見てきたとなると、創業当初から海外進出も視野に入れていたのではないですか?

今林 日本にとどまらず、海外でも勝負したい気持ちはあります。それほど遠くない将来に本社機能を米国に移す可能性を踏まえ、競合調査は済ませました。

――米国にはAI分野のライバルが多いでしょうね。

今林 確かに、AI市場は競合がひしめき合うレッドオーシャンです。しかし、セキュアAIとなると話は別。暗号化したデータを操作する高機能暗号の技術を生業にするベンチャーはいくつか見られますが、AI+暗号化はブルーオーシャンで、海外に出ても十分に勝負できると見ています。

今林 広樹(いまばやし・ひろき)氏
EAGLYS代表取締役社長
小学生時代から脳の働きに興味を持ち、2011年に早稲田大学へ入学。独学で人工知能(AI)やコンピュータの技術を身につける。2015年に卒業後、同大学大学院に進学。修士課程1年目に休学して渡米し、シリコンバレーのスタートアップ企業などで、データサイエンティストとして経験を積む。2016年に帰国して復学し、同年12月にEAGLYSを設立。修士課程を飛び級し、博士課程に進学。文部科学省よりセキュリティ・スペシャリスト認定。「AIモンスター」としてメディアに取り上げられるようになる。1992年生まれの25歳。