「特任教員」のその先は?

前回の記事では、大学の教員数が、大学の数の増加とともに戦後一貫して増え続けていること、しかし、近年ではその増加分の一定割合は、任期付の特任教員によって占められていることを指摘した。

 あわせて、任期付の特任教員には、アカデミックなバックグラウンドを持つシニア層や若手が着任し、学部などに所属することになるポスト(=特任教員Ⅰ)と、社会人経験などを経て、大学教育の新たな機能を担う初年次教育センターやキャリアセンターなどに所属することになるポスト(=特任教員Ⅱ)が存在することも見た。以下の議論にも関連するので、前回の記事で示した図を再掲しておく。

「大学教員」の布置状況。

 ここでは、なぜ大学教員の多様化がかくも急速に進んできたのか、そこにはどんな問題点が露呈しているのかについて考えてみたい。

大学財政の逼迫

 まず、注目しておかなくてはいけないことは、大学経営の観点から見て、特任教員が増加してきた背景には、それぞれの大学における財政状況の逼迫があるという事実である。

 周知のことではあるが、国立大学の収入の主要な部分を占める運営費交付金は、法人化が実現した2004年以降、傾向的に減額され続け、2015年度までは毎年1%ずつ減額されるという措置が取られてきた。

 2016年度以降は、国立大学を3つのグループ(地域貢献型、全国的な教育研究型、世界で卓越した教育研究型)に分け、それぞれの枠内で、評価に応じた傾斜配分を行うという方式に改められたが、言ってしまえば、縮小されたパイの取り合い状況が生まれただけであり、各大学の財政状況が好転に向かっているわけではない。