中国の原油生産量が、昨年の日量430万バレルをピークに減少を続けていることも見逃せない。高コスト体質である中国の国有石油企業は、シェール企業と同様に国内での原油生産を減少させており、8月・9月の生産量は前年比10%減となっている。専門家は「原油価格が1バレル=60ドルに達しなければ原油生産の本格回復は見込めない」としている。

 国内の生産減を補うために輸入の増加傾向は続くだろうが、中国全体の原油需要が今後も増加するとは限らない。中国の足元の原油需要はこのようにかなり脆弱である。

中国政府は金融引き締めを早期実施?

 市場関係者の間では、「11月までは減産協議の動きが原油相場の下支えとなる」との見方が一般的だ。しかし、前述のように中国の「爆食」が今後も続くとは思えない。

 中国経済について筆者が最近注目しているのは、9月の卸売物価指数(PPI)が前年比0.1%増と4年7か月ぶりに上昇に転じたことだ。中国のPPIは国内の過剰生産のせいで下落が続いていたが、「鉄鋼加工や石炭などの部門で減産が進む」との思惑から当該部門に投機マネーが流れ込み、製品価格を急激に押し上げたことでPPIはプラスに転じた(10月15日付日本経済新聞)。

 中国経済全体のリストラが順調に進むかどうかは定かではないが、期待先行でPPIが今後も上昇することになれば、このところ落ち着いている消費者物価指数(CPI)にも悪影響を及ぼしかねない。

 リーマンショック以降、中国ではマネーサプライが急激に増加したが、実体経済の過剰生産が「重し」となってPPIを下落させていたため、深刻なインフレは今のところ発生していない。だが、PPIが上昇基調に転じたことをきっかけに、CPIが急上昇する兆しを見せれば、中国政府は国内の金融引き締めを早期に実施する可能性がある。中国政府内では「2ケタ台のインフレが天安門事件を招いた」との認識が広く浸透しているため、国内でのインフレ発生を極度に恐れていると言われているからである。