高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉が実質的に決まったのを受けて、10月7日に政府の「高速炉開発会議」の初会合が開かれた。世耕弘成経済産業相は「高速炉の開発は必要不可欠だ」と述べ、従来の高速増殖炉(FBR)に限らず広く高速炉(FR)を開発することを示唆した。
しかし現実に検討されているのは、フランスの開発している「ASTRID」と呼ばれる高速増殖炉だ。それをあえて「増殖炉」と呼ばないところに、原子力産業の窮状があらわれている。かつて「燃やせば燃やすほど燃料が増える夢のエネルギー」といわれた高速増殖炉の夢は幻に終わったのだ。
高速増殖炉は死んだ
高速増殖炉とは「高速の中性子を使って燃料を増殖させる原子炉」という意味で、燃料にはウランを再処理してつくったプルトニウムを使う。FBRでウランに中性子を当てるとプルトニウムに変わり、プルトニウムが燃料より「増殖」するのが売り物だ。
この反応を起こすのに必要な「高速」の中性子を使う原子炉を広く「高速炉」と呼ぶ。普通の原子炉(軽水炉)と違う特徴は、原子炉を冷やすのに液体のナトリウムを使うことだが、ナトリウムは配管から漏れると、酸素や水と反応すると燃え上がる厄介な性質がある。
これは軽水炉で水が漏れるのと同じで、重大な事故に発展するおそれはないが、火災が起こるとマスコミが騒ぎ、地元が心配する。もんじゅも1995年にナトリウムが漏れて火災が発生し、その後も20年以上、止まったままだ。FBRで「増殖」するプルトニウムの効率は悪く、核燃料サイクルへの巨額の投資に見合わない。
原子力規制委員会もさじを投げ、「運営主体を変更すべきだ」と提言したが、今からもんじゅを引き受ける電力会社はなく、政府も否定的だ。こうして20年たってやっと撤退が決まったのだが、再処理工場はFBRでプルトニウムが増殖することを前提にして建設されたので、その挫折で核燃料サイクルは宙に浮いてしまった。
これは「ダイヤモンドをつくる工場」を前提にしてその関連施設を数兆円かけてつくったら、肝心のダイヤモンドがつくれなかったような話だ。本当にFBRが実用化できるのかどうか確認しないで、先に再処理工場をつくったのが失敗だった。