原子力規制委員会は今月、高速増殖炉(FBR)の原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の運営主体を、現在の日本原子力研究開発機構から変更するよう文部科学省に勧告した。しかし20年前からトラブルが相次ぎ、ほとんど運転していないもんじゅの受け皿が見つかる見通しはなく、これは廃炉にするという「死刑宣告」だと関係者は受け止めている。
もんじゅが廃炉になると、日本の原子力政策は根本的な見直しを迫られる。日本の原発でできる使用ずみ核燃料は、再処理工場(青森県六ヶ所村)でプルトニウムを分離し、それをFBRで燃やすとさらに多くのプルトニウムができる――という核燃料サイクルを前提にしているので、FBRがなくなると、このサイクルが崩れてしまうのだ。
使い道の分からないプルトニウムが増えてゆく
私も青森県六ヶ所村を見学して関係者の話も聞いたが、ほとんどの専門家の意見は一致している。FBRが運転できなければ、再処理は経済的に成り立たない。工場で分離したプルトニウムの使い道は、ウランにプルトニウムを混ぜてMOX燃料をつくるプルサーマルしかないが、MOX燃料の単価は元のウランの2倍だ。
再処理してわざわざ高価な燃料をつくるプルサーマルは、運転すればするほど赤字になる。使用ずみ核燃料をそのまま捨てる直接処分に比べて、再処理すると1kWh当たり1円高くなるというのが政府の計算である。
もう1つの問題は、再処理で分離されるプルトニウムが核兵器に転用できることだ。今月、長崎市で開かれた核廃絶の国際会議「パグウォッシュ会議世界大会」でもこの点が問題になり、世界の科学者31人が、再処理工場の稼働の無期延期を求める意見書を安倍首相あてに提出した。
この意見書では、日本がすでに原爆数千発分に相当する50トン近いプルトニウムを保有していることを指摘し、再処理工場が稼働してプルトニウムが生産されると「核兵器に利用可能なプルトニウムは核不拡散の努力を弱める」として計画の断念を求めた。
中国の軍縮大使も、10月の国連総会で「日本は大量の余剰プルトニウムを貯め込んでいる。ひとたび政策決定すれば、核保有国になる」と批判した。日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国の中で唯一、核武装していないのにプルトニウムを保有しており、中国の疑惑にも根拠がある。
このままではカーネギー財団の報告書も指摘するように、使い道の分からないプルトニウムが増え、国際的な不信を招く。2018年には日本のプルトニウム保有を例外的に認める日米原子力協定が切れるが、協定を更新するためにも再処理について説明が必要だ。