9月末のOPECの「減産」合意以降、これまでのところ米WTI原油先物価格は堅調に推移している(米国の在庫が5週連続で減少したことを受けて10月6日時点の価格は1バレル=49ドル台)。だが、原油価格がこのまま上昇していくと考えるのは早計である。
OPECはなぜ減産に合意したのか
OPECは9月28日の会合で、原油生産量を加盟国全体として日量3250~3300万バレルに制限することで合意し、11月30日に開催される通常総会に向けて加盟各国の個別の生産上限を決定すべく調整していくこととなった。
合意に至った最大の理由は、原油市場におけるさらなる供給過剰への懸念だった。OPEC会合を翌日に控えた9月27日、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は「世界の原油生産量は2017年後半になるまで需要を上回り続ける」との見通しを明らかにした。世界の原油市場の供給過剰は100万バレルを超える情勢にあった。
世界の原油需要に対して強気の姿勢をとり続けてきたサウジアラムコでさえ、OPEC会合の直前に「世界の原油需要はそれほど堅調ではない」と発言するなど、需要面の懸念も浮上していた。
大きな要因は、サウジアラムコが最大の市場と見込む中国の原油需要に黄色信号が灯り始めていることだ。8月末の中国の純国内石油需要は日量1089万バレルと9カ月ぶりの前年比マイナスになり、石油需要の頭打ちが鮮明になってきている。ガソリンの供給過剰状態が9月にさらに悪化しているため、これまで原油輸入拡大を牽引してきた「茶壺」と呼ばれる民間の製油所の統廃合に中国政府が本腰を入れ始めている。さらに人工衛星の画像分析から「中国の戦略備蓄は政府発表の数字(約3200万トン)の2倍以上の約8000万トンに達している」との指摘もある(9月30日付け米ZeroHedge)。