9月中旬に訪米した稲田朋美防衛大臣が、中国による覇権主義的な南シナ海進出に関して、「アメリカが南シナ海で実施している『公海航行自由原則維持のための作戦(FONOP)』を支持する」旨を明言した。そのためアメリカ軍関係者などの間では、日本がアメリカとともにFONOPを実施するものと理解されている。一国の大臣が明言した以上、アメリカ側の反応は当然であろう。
これを受けて中国側は、日本がアメリカに追従して南シナ海での中国の活動に介入することに対して不快感を露わにしている。先週も中国国防当局は、「日本がアメリカと共同パトロールや共同訓練などを中国の管理する海域で実施するということは、まさに火遊びに手を出すようなものだ。中国軍が座視することはあり得ない」と強い口調で日本に“警告”を発した。
オバマ政権が渋々認めた中途半端なFONOP
だが、当のオバマ政権は中国に対して腰が引けた状態が続いており、FONOPの実施すらもなかなか認めようとはしていない。
アメリカ軍関係者の中でも対中強硬派の戦略家たちは、数年前から南シナ海でのFONOPを実施すべき旨を主張していた。2014年春には、南沙諸島のいくつかの環礁(ジョンソンサウス礁、ガベン礁、クアテロン礁)で中国が埋め立て工事を開始したことがフィリピン政府などによって確認されたため、中国側をある程度威嚇する程度のFONOPを実施すべきであるとの声が上がった。しかし、オバマ政権に対しては暖簾に腕押しであった。
そして、2014年6月になると、ファイアリークロス礁で、埋め立てというよりは人工島が建設される計画が進められていることが明らかになった(本コラム、2014年6月26日「着々と進む人工島の建設、いよいよ南シナ海を手に入れる中国」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41041)。当然、アメリカ国防当局や連邦議会などの対中強硬派の人々から、軍事的色彩の強い強硬なFONOPの早期実施の声は強まった。だが、オバマ政権によるゴーサインはなかなか発せらず、ファイアリークロス礁、ジョンソンサウス礁、ガベン礁、そしてクアテロン礁で人工島の建設が進められていった。