「南シナ海の大部分が中国の“主権的領域”である」とする「九段線」(本コラム2016年7月21日「仲裁裁判所の裁定に反撃する中国の『情報戦』の中身」参照)は、ハーグの国際仲裁裁判所によって「国際法的には認められない」と裁定された。だが、この裁定によって、ますます国際的にその名が浸透してしまっている感が否めない。
一笑に伏せなくなった“怪地図”
中国では南シナ海の九段線にとどまらず太平洋の広大な海域をも中国の“主権的領域”であるとする境界線が引かれた世界地図が出回っているという。この世界地図が実際に中国国内でどの程度浸透しているかは分からない。しかし、インターネットを通して国際社会に向けて発信されていることは確かである。
この種の“怪地図”はこれまでにも繰り返し登場しており、かつては米軍やシンクタンクの中国専門家たちの多くはまともに相手にしなかった。しかしながら、今回は少なからぬ人々が問題視しており、議論が続いている。
差し当たって中国の覇権がこの地図の通り実現するとは考えられていないものの、「中国の戯言」として一笑に付している段階は過ぎ去ったと考えねばならなくなった。
人工島の軍事的価値を軽視する“主流派”陣営
もっとも、現在進行中の中国による南シナ海(九段線内部領域)での覇権確保作業に関しても、対中専門家たちの間での評価、そして対応構想が一致しているわけではない。