オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、南シナ海におけるフィリピンと中国の領有権に関する紛争に対して、フィリピン側の申し立てを支持した。
中国による「南シナ海の『九段線』内部は歴史的に見て中国の主権的領域である」という主張は、認めることができないとして退けられた。
また、九段線の考え方をもとにして南沙諸島のいくつかの環礁の低潮高地(満潮時には海面下に水没し、干潮時には海面上に陸地として姿を現す土地)を埋め立てて建設が進められている人工島に関しても、「人工島周辺海域は中国の領海とはなり得ない」と仲裁裁判所は判断した。根拠となったのは、国連海洋法条約にある「本土から12海里以上離れた海域にある低潮高地の周辺は領海とは認められない」という規定である。
もっとも、国連海洋法条約には「海洋の境界画定に関する紛争に関しては、紛争当事国は解決手続きを受け入れないことを宣言することができる」となっており、何らかの拘束力ある解決策が提示されても、国連海洋法条約自体には強制力はない。同様に、仲裁裁判所の裁定に関しても、裁定を当事国に強制する手段は存在しない。
したがって中国政府は、「仲裁裁判所が提示した裁定なるものには拘束力はなく、そもそも無効なものであり、中国は受け入れない」として裁定を無視する姿勢を明らかにしている。