オバマ大統領の対外政策は、シリアへの軍事的不介入以来、同盟国の多くや国内保守派に大きな不信感を抱かれており、ウクライナ情勢でますます信頼を失墜した。そして今度はイラク情勢が悪化したため、さらなる強烈な批判にさらされている。オバマ政権がぶち上げているアジア回帰政策は、ウクライナ情勢とイラク情勢の前に忘れ去られてしまった感もある。

 オバマ大統領の東アジア歴訪以降、それらに追い打ちをかけるように、中国による東シナ海と南シナ海での軍事的恫喝は激しさを増している。アジア回帰政策などはまるで紙に書いた文字に帰しつつあると言っても過言ではない。

 このような状況下で、真のアジア重視派から「アメリカ政府は深刻な警戒感を持って対処すべきである」との声が持ち上がっているのが、南シナ海での中国による“人工島”建設計画である。

岩礁周辺を埋め立てて海軍基地を建設

 中国が2014年2月からサウスジョンソン礁(中国名「赤瓜礁」)を埋め立てて拡張し始めていることは、フィリピン政府をはじめ各国が確認している。フィリピン政府によると、最近は中国船がガベン礁(南薫礁)とクアテロン礁(華陽礁)にも出没して埋め立て作業を開始する気配を示しているという。

 6月になると、サウスジョンソン礁から150キロメートルほど西方に位置するファイアリークロス礁(永暑礁)に人民解放軍が軍事基地を建設する計画が明らかになった。ファイアリークロス礁は、地表最高高度が海抜60センチで満潮時には海面下1メートル程度に没してしまう暗礁である。

スプラトリー諸島周辺の海域概念図。赤い線は南シナ海を縦貫するシーレーン
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