一方で、シリア空爆は、ウラジーミル・プーチン大統領の支持率を過去最高に押し上げている。

 ロシア世論のプーチン大統領支持率は過去最高の89.9%を記録(10月17-18日調査、全ロシア世論調査センター)、シリア空爆支持率は53%(10月23-26日調査、Levadaセンター)で不支持率22%を上回っている。空爆は同時に、軍需産業に少なからず利益をもたらすことになろう。

 ロシア政府は、シリアのアサド政権スポンサー活動に加え、親ロ的、あるいは同胞が住む諸地域への支援も続けている。

 例えば、アブハジア共和国、南オセチア共和国といったジョージアからの分離独立を目指す勢力である。

 また、ドンバスの両人民共和国に対しても軍事援助に加え、天然ガスの供与や人道援助を行っている。沿ドニエストル共和国に対しても、ガス供与、年金負担などの援助を行っている。以上のロシアの対外スポンサー活動費をまとめると、次のようになる。

2015年度のロシアの対外スポンサー活動費。(出所)Reva Bhalla, “The Logic and Risks Behind Russia’s Statelet Sponsorship” その他から筆者作成

 

 公式、非公式をひっくるめると、ロシアの対外スポンサー費用は年50億ドルに達し、連邦予算の3%に迫る。

縮小に向かうドンバス事業

 上記の表を見ると、域内人口、面積が大きいドンバス(ウクライナ東部のルガンスク/ドネツク人民共和国)の費用が突出していることが分かる。

 このうち、ロシア政府の公式援助は、人道援助物資(ロシア非常事態省が組織)だけであり、天然ガス供給はガスプロム社の未回収金として計上される。

 軍事援助や財政援助は公式には認めていないが、昨年8月以降、ドンバスに居座る数千人規模の軍事力の存在や、現在の人民共和国の公務員給与・年金の支給状況から見て、何らかの経路を通じてロシア政府が負担していることは確実だ。

 このドンバス事業が、ロシア政府の中で整理対象とされている。