「カラダによい水」は薬にも毒にもならない

謎多き「機能水」の正体(前篇)

2015.10.16(Fri)漆原 次郎

平岡厚氏(以下、敬称略) 1997年から98年ごろ、水を電気分解すると原子状の水素(H)が生じ、それが、がんや糖尿病を抑えると九州大学の白畑實隆氏が主張していました。白畑氏は、水溶液中に含まれる原子状の水素を「活性水素」と呼んでもいました。

 けれども、原子状の水素が、安定的に水の中に存在することはありえないというのが科学的な常識です。それで、白畑氏の主張を反証しようと考えたわけです。

――平岡さんは2012年に「『飲むと健康に良い』と宣伝されている諸水製品類の実態の検討」という総説論文を発表しましたね。活性酸素を消去する成分が含まれていて体内で抗酸化作用を示すと宣伝される水と、水分子のクラスターサイズが小さく生体組織への吸収率が高いと宣伝される水について、それぞれ検証したと聞きます。まず、抗酸化作用を示すと宣伝される水について、どのような試験をしたのですか?

平岡 「活性水素による抗酸化作用がある」と宣伝されている市販の水を含む4点について、本当に抗酸化作用があるのかどうかを、試験管内で確かめてみました。

――結果はどうでした?

平岡 強力ではありませんでしたが、ある程度の抗酸化作用は確かに見られました。けれども、白畑氏の言う「活性水素」は生じていませんでした。抗酸化作用は、電気分解によって普通に生じる水素ガス、すなわち分子状の水素(H2)や、水溶液中の水素ガスの影響を受けたバナジウムイオンといった他の物質によるものという説明で済むものでした。

 白畑氏はその後、「活性水素」は電気分解のときに電極から剥がれ落ちた金属の表面に吸着したものであって、水に溶けたものではないと述べ始めました。そうであれば、科学的に非常識な話であるとは必ずしも言い切れなくなります。白畑氏は、とても強い電圧をかけて電気分解をしたようです。私のほうは普通の電気分解の条件で試験しましたが、やはり「活性水素」は生じませんでした。

 いずれにしても、「活性水素」という言葉は、水に溶けた物質として存在しているような誤解をあたえるため、不正確だと思います。

――「活性水素」は普通の試験条件では生じなかったものの、他の物質によって抗酸化作用は示されたとのことでした。では、人がその「機能水」を飲めば、抗酸化作用を得られるのですか?

平岡 それについても、健常者の協力者に、試験管内試験でもっとも抗酸化作用のあった水を飲んでもらい、普通の水との比較などから飲用効果を確かめてみました。

――結果はどうでしたか?

平岡 統計的に有意な飲用効果は検証できませんでした。

――試験管内の試験では抗酸化作用があったのに、人の体内では抗酸化作用は見られなかったというわけですか。それは、どうしてなのでしょう?

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