ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンのディーゼル車不正は世界に様々な波紋を投げかけることになるでしょう。
まだ明らかになっている事実は限られており、今後の報道に注目していきたいと思いますが、同時に限られた情報からも察せられる背景や、中長期的な影響の可能性を急ぎ検討して見たいと思います。
不正ソフトウエア搭載
まず、9月23日時点で明らかになっている容疑事実を確認しておきましょう。
米国の当局が告発するところによれば、フォルクスワーゲンは2008年以降に出荷された1100万台に及ぶディーゼル車で、実際の走行時には排ガスが環境基準を上回る規制物質を含むのに、検査時のみはそれが下回って表示されるような不正ソフトを搭載した、とされています。
すでにフォルクスワーゲン側から謝罪が出ており、この事実は動かないものかと思われます。
米国側は刑事事件としての捜査を検討とのこと、ミスとか過失ではなく、意図的になされた犯罪であるとの見方が伝えられています。
「事件」の真相は今後段階的に明らかになっていくでしょうが、もし報じられるとおりであれば、こうした「ちんけなインチキ」がどうして発生したのか、それはいったいどのレベルで引き起こされた「犯罪」で、社内でもどの範囲までが関わり、また周知の環が広がっていったのか、といったことが気になります。
まずもって邪推するなら、厳密化する環境基準に対応してエンジン回りなど自動車自体の対応イノベーションに要するコストを<不正削減>したのだろう、といったことは察せられます。
2008年という年号はリーマンショック~東西冷戦体制が崩壊した「冷戦後」のレジームが経済の切り口からほぼ完全に崩壊した時期に当たることも注目すべきでしょう。
「ポスト冷戦期」に拡大した風呂敷の中身を問われ、広げ過ぎた裾野に対応できず贋金を包んでそ知らぬ顔をして過ごさざるを得なかった・・・といった経過が見て取れます。