「中国沿岸警備隊が武装強奪」、フィリピン当局が非難

南シナ海で接近する中国の沿岸警備隊の船舶(上)とフィリピンの補給船(2014年3月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/Jay DIRECTO〔AFPBB News

 安倍政権は日本国内での安全保障関連法案に関する説明では、中国の軍事的脅威を極力口にしていない。

 例えば、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は繰り返し強調しているが、北朝鮮の弾道ミサイルとは比較にならないほど日本を脅かしている中国の弾道ミサイルならびに長距離巡航ミサイルの脅威(拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』参照)はなぜか口にしたがらない。

 同様に、中国人民解放軍によって南シナ海を縦貫する海上航路帯を妨害される可能性についても沈黙を続けている。

南シナ海を機雷で封鎖するのは困難

 一方で、ホルムズ海峡でイランが機雷を敷設して海上航路帯を封鎖する可能性については安倍首相自らも繰り返し指摘し続けている。安保法制国会審議では「現時点では、ホルムズ海峡での機雷掃海しか、他国領域での自衛隊による集団的自衛権に基づいた武力行使は念頭にない」とまで公言している。

 もっとも、安倍政権はホルムズ海峡危機に関しては「機雷敷設による海峡封鎖」のみを想定しており、イランの地対艦ミサイルや潜水艦や小型攻撃艇それに航空攻撃といったアメリカ海軍が機雷戦以上に警戒している脅威に関しては何ら言及していない。

 日本政府は南シナ海の自由航行妨害という局面についても、このような思考回路の延長で想定しているようだ。つまり、「人民解放軍が機雷を敷設して南シナ海を封鎖する」というシナリオのみを対象にしており、南シナ海における中国軍事力の脅威は真剣に考えられていないように見受けられる。