比田勝港はとても小さな国際港だった。対馬の最北部を少し東側に回り込んだ入り江の奥にある。入り江の中は波がほとんどなく静かな海面に太陽の光がきらきらと輝いている。桟橋から下をのぞくと、大小さまざまな魚たちが泳いでいるのが見える。魚影は非常に濃そうだ。
プロの猟師顔負け、韓国からの釣り人
思わずカメラを向けてシャッターを切るが、うまく撮れない。レンズが悪いのかと望遠に換えたがやはり失敗。海の中の魚を上から撮影するのは非常に難しい。
ところで、韓国から対馬に来る観光客のお目当てはいろいろだが、その中でも最もポピュラーな目的の1つが釣りだという。
「韓国からの釣り客ぅ、ありゃ、趣味じゃないよ。プロじゃないかぁ。数人で1艘の漁船をチャーターして沖へ出て釣るのが一般的だけど、彼らは釣ったそばから魚を〆て、発泡スチロールの箱の中に入れていく」
「その手際の良さったら・・・。韓国へ持って帰って売っているんじゃないかな。自分で食べられる量ははるかに超えているし。帰りの船には魚の詰まった大きな発泡スチロールの箱を3つも4つも抱えて帰る人もいるさ」
比田勝港で船を待つ間、港のそばにいた島のおっちゃんをつかまえて聞いた話である。少し棘があるのを感じたのは思い過ごしだろうか。
釣り以外の目的では、トレッキングやサイクリングにも人気があるようだ。
比田勝港で昼過ぎの船を待つ間、JR九州の「ビートル号」と共同運航をしている韓国・未来高速のジェットホイル「コビー号」が釜山から到着した。
その船からは、ロードバイクに乗った韓国人が数人降りてきた。自転車用のロードスーツに身をくるんでいて手荷物が見当たらない様子から、釜山港へ自転車で乗りつけ、そのまま乗船したに違いない。
対馬を日帰りかせいぜい1泊で対馬をサイクリングして回るのだろう。