先週は原稿を書いたので、今週こそ休ませてもらおう・・・。そう思っていたのだが、さすがは中国だ。北京から帰国した翌日の11月23日、中国国防部は東シナ海に「防空識別区を画定・設定する」と発表してくれた。その直後から筆者には、なぜ今のタイミングなのか、真の意図は何か、といった質問が殺到した。
こうなると、今週何も書かないというわけにはいかない。「なぜ今なのか」などと聞かれても、とっさには思いつかないが、かくも堂々と自殺行為をやってのける中国国防部には恐れ入る。
今週はちょっと短めだが、久方ぶりの「中国外交の大失敗」と見る筆者の独断と偏見に暫しお付き合い願いたい。
周到に準備されていた識別圏
筆者は軍事専門家ではないが、この種の識別圏設定がどの程度ややこしいかは想像できる。
今回中国側は、北緯・東経がそれぞれ異なる6つの点をつなぎ、領海線と重なる空域を「東海防空識別区」として発表した。現行国際慣習を踏まえつつ、それぞれの経度緯度を決めることは決して容易ではなかろう。
中国側サイトによれば、同空域は、1997年3月14日の「中華人民共和国国防法」、1995年10月30日の同国「民用航空法」および2001年7月27日の同国「飛行基本規則」に基づき画定・設定されたとしているから、新法ではなく、既存の法的枠組の中で設定されたことがうかがえる。少なくとも思いつきではない。
さらに、専門家の友人に見せてもらった中国語文献によれば、少なくとも2カ月ほど前の時点で、北京の軍関係筋が「中国空軍・海軍内部で」「防空識別区について積極的に計画」が練られており、「早期の発表が望まれていた」のだそうだ。
されば今回の識別圏設定が、最近の尖閣を巡る日中軋轢の結果などではなく、解放軍が近年の米軍戦闘・偵察機などの度重なる「軍事的圧力」に対抗すべく、黄海、東シナ海、南シナ海における中国領海の外側のEEZ(排他的経済水域)上空を管理しようとする長期的努力の一環であることが分かるだろう。