11月23日、中国国防省は東シナ海上空に防空識別圏を設定したと発表した。発表には防空識別圏設定に関する声明と規則を定めた公告も含まれ、同日午前10時(日本時間11時)から施行された。
中国空軍は早速、TU154情報収集機、Y8電子偵察機を尖閣諸島の北約40キロまで飛行させ、防空識別圏を巡航させたことを表明した。
防空識別圏なら問題ない、しかし領空なら全く別
この防空識別圏には沖縄県の尖閣諸島も含まれ、我が国の防空識別圏とも重複する部分が多い。同日、外務省の伊原純一アジア大洋州局長は中国の韓志強駐日公使に電話で厳重抗議した。米政府も同日、中国に外交・軍事ルートで強い懸念を伝え、素早い対応を示した。
メディアも一斉に取り上げた。だが、不意打ちをくらったせいか、的外れの議論が多い。今回の中国の動きに関し、何が問題で、何が譲れないかを明確に整理しておく必要があるだろう。
新たに設定した中国の防空識別圏が日本の防空識別圏と重複しているのが問題なのではない。また「我が国の固有の領土である尖閣諸島の領空を含むもので、全く受け入れられない」という抗議も、厳密に言えば正確ではない。
問題は、公海上に設定した防空識別圏が中国の管轄権が及ぶような空域になっていることである。つまり防空識別圏とは言いながら、あたかも領空のような空域を設定し、国際法で認められた公海上空の飛行の自由を妨げていることなのである。
しかもその中には我が国の領空(尖閣諸島)が含まれており、尖閣諸島の領空があたかも中国の領空であるかのごとき設定をしていることである。
中国国防省の公告に拠ると、「防空識別圏は中国国防相が管理する」としたうえで「圏内を飛行する航空機は飛行計画を中国外務省または航空当局に提出する義務」を負わしている。また「圏内の航空機は、国防省の指令に従わなければならない」とし「指令を拒み、従わない航空機に対し、中国は防御的な緊急措置を講じる」と明記している。
これは、国際法上の一般原則である公海上の飛行自由の原則を不当に侵害するものであり看過できない。
中国高官は「防空識別圏を設けるのは、日本人の特権ではない。私たちも設定することができる」と語っている。そのとおりであるが、今回設定したのは、防空識別圏の名を借りた中国の「管轄空域」だと言っていい。