先週、ドイツが強くなりつつあるという話を書いたばかりだが、強いドイツは、もちろん他国の妬みを買う。

 11月13日、ドイツ人の神経を逆なでするようなニュースが流れた。

EU委員会からドイツの輸出超過に「お咎め」

米監視問題、EUと米が合同作業部会で調査へ FTA交渉と並行

欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長〔AFPBB News

 EUの委員会が、ドイツの輸出超過がEUの他の加盟国に悪影響を及ぼしている可能性があると言い出したのだ。そこで、来年早々にこれを調査し、ドイツが非を改めない限り、罰金を科すこともあるという。

 ドイツのほかにも、いろいろな理由でさらに15カ国が俎上に載せられているらしいが、これは、おそらく、ドイツだけが槍玉に挙がっているという印象を薄めるために違いない。

 輸出超過ということは、輸出ができる、つまり、国際競争力があるということだ。そして、ドイツに国際競争力があるからこそ、今までEUの経済破綻国は、しっかり稼いだドイツから多くの経済的援助を受けることができた。それなのにEUに悪影響を及ぼしているなどと非難されては、ドイツ人は浮かばれない。

 「これではまるで、サッカーのブンデスリーガで、『バイエルンが強すぎてけしからん。他のチームが勝てず、ブンデスリーガの平和が乱される。バイエルンから罰金を取れ。そして、他の弱いチームも上に上がれるようにしろ』と言っているのと同じだ」とカンカンになっている人もいるが、確かにその通りだ。

 欧州委員会のバローゾ委員長は、ずいぶん気を使っているらしく、「ドイツがこのように競争力のある国民経済を保っているのは、ヨーロッパにとって大変良いことだ。ヨーロッパにもっとたくさんドイツがあればよいのに!」などと、おべんちゃらまで言っていた。ただ、果たしてそれでドイツ人の機嫌が直るかどうか?

 EUには、輸出額と輸入額の差が3年平均で6%以上になってはいけないという規則があるらしい。それを守らない場合、EU全体の経済の調和を乱したということで、懲罰の対象になる。そして、ドイツの過去3年の平均が、まずいことに6.5%の輸出超過になっている。

 ドイツの輸出は、EU内で行われているものがほぼ6割を占める。だから、ドイツが儲ければ儲けるほど、輸入超過に陥るEU国が出てくるのは当然のことだ。