(英エコノミスト誌 2013年11月23日号)

人間の起源を巡り、激しく、政治的な論争が行われている。

「子どもをもうけた」、聖職者告白の波紋

人類の起源は・・・〔AFPBB News

 米国には、昔ながらの信仰が根強く残っている。1つの数字を見れば、それがよく分かる。ギャラップの世論調査では、過去数十年間、常に全国民の40%以上が、人間は1万年足らず前に神がほぼ現在の形で創造したものであると回答している。

 こうした人々が信じているのは、人間の起源に関する「若い地球説」の主張だ。若い地球説は、聖書の一言一句をよりどころとし、科学による反論を一蹴する(化石はノアの大洪水の遺物であり、進化は無神論者が広めた作り話であると主張する)。

 最近のある世論調査では、共和党支持者の58%、民主党支持者の41%が神による創造論を支持している。こうした信仰を下支えしているのは、聖書の無誤性の原則、つまり聖書に誤りはなく、不変の真理であるという確信だ。

揺らぐキリスト教徒保守派

 確信を求めるのは米国の伝統だ。旧世界の信者は多くの場合、宗教を文化遺産のように受動的に継承する。一方、個人主義者の集まりである米国人は、納得できる教義を求めて教会や説教師を渡り歩く傾向がある。また、米国人は基礎的文書(憲法など)を、一般市民もそれを読み込めば不変の真理を見いだせるものとして高く評価する。

 しかし同時に、一言一句を言葉通りに解釈する信仰は、危機に瀕している。米国では戦後、ビリー・グラハム氏の改革運動から宗教右派の台頭まで、様々な厳格な宗派の運動が国民の暮らしに影響を及ぼしてきたが、現代の若者はこうした宗派に背を向けようとしている。福音派の家庭に育った若者の半数は、18歳になると信仰を失う。公立大学に入学した者は、特に信仰を失いやすい。

 ミレニアル世代(1980年代前半~2000年代生まれ)は、組織化されたあらゆるものを軽視する。組織化された宗教は言うまでもない。福音派の調査団体バーナ・グループによれば、米国の非宗教化を悪いことと考える年長者に対し、多くの若者が息苦しさを覚えているという。

 若いキリスト教徒は年長者に比べ、同性愛者の権利を容認する。バーナ・グループが調査した若者の4分の1は、創造論に疑義を呈し、自分が通う教会は「非科学的」だと回答している。

 強い信仰が危機に瀕しているというのは、一見すると逆説的だが、厳格さによって説明がつく。曲げられないものは、むしろ折れやすいということだ。

 保守的なキリスト教徒の間ではこうした危機感が強く、運動の長期的な見通しを巡る議論が沸き起こっている。そこで、筆者は先日、ボルチモアで開催された米国最大の福音派神学会の年次大会という、未知の領域に足を踏み入れてみた。大きく掲げられたテーマは、聖書の無誤性だった。