フィリピンを襲った巨大台風から2週間経った11月22日、中国海軍の病院船が船山軍港を出発しフィリピンに向かった。24日にタクロバン沖に到着した模様であり、本コラムが掲載される頃には、乗船している100名ほどの医師をはじめとするスタッフによる被災者への医療活動が本格化しているものと思われる。

 この中国海軍病院船の派遣に関しては、アメリカ軍事関係者の間でもちょっとした話題になっている。

アメリカと日本が救援活動「レース」に圧勝

 フィリピンでの発災直後から迅速な救援活動を開始した米軍とは対照的に、南シナ海でフィリピンとの対決を強めている中国は“形ばかりの”支援金(世界第2の経済大国とは思えないほどの金額)を拠出したものの、救助隊や救援支援隊などの派遣は一切実施しなかった。

 「敵に塩を送る」といった武士道精神など持ち合わせていない共産党政府としては当然の措置と言えよう。しかし、自衛隊がヘリ空母・輸送揚陸艦・補給艦をはじめとして各種航空機や陸上支援部隊を含んだ大規模救援隊を派遣したため、さすがにアジアの盟主を気取ることが脅かされると考えたのか、あわてて海軍病院船ならびに輸送揚陸艦を派遣して、医療活動をはじめとする支援活動を実施することとなった。

 フィリピン救援に関しては(今回のフィリピン巨大台風だけではなく、世界各地での大規模災害に対する国際救援活動では常に行われることではあるが)、国際軍事界では展開規模と展開速度に関する“レース”を注視していた。

 結果は、相互救援協定があるアメリカは例外的存在ではあるが、アメリカそして日本が中国に圧勝したということになった。一方、中国が急速に拡張し続けている海軍力は、日本やフィリピンをはじめとする中国周辺諸国を軍事的に威嚇する目的であったことが誰の目にも明らかになってしまった。

 アメリカ海軍病院船は発災から5日目にはカリフォルニア州サンディエゴを出発したが、到着は12月に入ってからである。そのため、被災地では中国海軍病院船の方が先に医療活動を開始することになる。