中国海警局の艦船に衝突され大きな穴の開いたフィリピン沿岸警備隊の巡視船(8月19日、提供:Philippine Coast Guard/AP/アフロ)

中国海警船、フィリピン巡視船に故意に衝突

 フィリピン(比/比国)政府は8月19日、同国沿岸警備隊の巡視船2隻(「BRPバガカイ」と「BRPケープ・エンガノ」)が、エスコダ礁(Escoda Shoal)南東約20海里の海上で、中国海警局の艦船(以下、海警船)2隻(「CCGV-3104」と「CCGV-21551」)に衝突されたと公表した。

 比沿岸警備隊が公開した画像には、バガカイに幅約1メートルの穴が開いている様子が写っている。

 また、ケープ・エンガノには「軽微な構造的損傷」があり、右舷と左舷の両方から衝突を受け、船体にへこみと幅1.5メートルの穴が開いている。

 比国家安全保障会議のジョナサン・マラヤ次官は、この争いは「中国海警局の船舶による違法かつ攻撃的な行動」によるものだとし、衝突された2隻の巡視船は南山島(Nanshan Islands)とフラット島(Flat Islands)のフィリピン基地への補給任務を遂行しており、事件後も任務を継続すると述べた。

 事件が起きたエスコダ礁は、比国の排他的経済水域(EEZ)内に存在する。

 一方、中国は一方的に南シナ海に9段線を引き、国際裁判所が国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき中国の領有権を全面的に否定する裁定を行った後も、それを無視して同海のほぼ全域を自国領であると頑なに主張している。

 それを論拠に、中国海警局は8月19日、サビナ礁(Sabina Shoal)付近で比沿岸警備隊の巡視船2隻が「不法侵入」し、海警船に衝突したと発表した。

 中国側が複数回にわたって警告したが、比側が「無視」した結果、衝突が起きたという。

 加えて、海警局報道官は談話で、「権益侵害の挑発行為を直ちにやめなければ、それにより引き起こされる一切の結果を比側が負うことになる」と警告した。

 比巡視船に穴が開く被害が出ていることや、中国の9断線の不法な主張、海警局報道官の談話を重ね合わせると、中国海警船が比巡視船に故意に衝突したことは明らかである。

 中比両国は南シナ海の領有権を巡って対立しており、今回の中国による新たな攻撃的行動により、中比の領土紛争は一段と緊張が高まる恐れがある。