日米豪比の協力を強化せよ

 足元、中国の違法かつ攻撃的な行動に、比国一国のみで対処するには荷が重すぎよう。

 そのため、米国は米比相互防衛条約(1951年締結)に基づき、1998年に「訪問米軍地位協定(VFA)」を取りきめ、2014年に「防衛協力強化に関する協定(EDCA)」に署名した。

 EDCAは、フィリピン軍の能力向上、災害救援などにおける協力強化、米軍のローテーション展開米国によるフィリピン国内拠点の整備、装備品・物資などの事前配置を可能とするものである。(下線は筆者)


 これによって、比国において米軍がローテーション展開できる駐屯地・基地は、併せて9か所になった。

 9か所の駐屯地・基地は、北部のルソン島に陸軍駐屯地2か所(うち、1か所は大型飛行場あり)、海軍基地2か所、空軍基地1か所、南部のマクタン島とミンダナオ島にそれぞれ空軍基地1か所、南シナ海に面したパラワン島に空軍基地1か所、バラバク島に海軍基地1か所の配置になっている。

 また、米国は滑走路の拡張や訓練施設の整備などに米国予算を充当している。

 これらの配置は、明らかに中国軍の行動への対処を考えたものと見られ、特に米海軍にとってバシー・ルソン海峡や南シナ海に向けた作戦拠点を想定していることが容易に察せられる。

 また、米国は比国に防衛装備品を供与するとともに、米比合同軍事演習「バリカタン」などを通じて、比軍の能力向上や相互運用性など共同対処力の強化に注力している。

 日本は、比国との間で首脳会談や「2+2」などのハイレベル交流のほか、防衛装備品の移転、南シナ海の共同パトロールや双方の共同訓練・演習参加などの軍種間交流を拡大している。

 2024年4月、岸田文雄首相は米国において日米比首脳会談を行い、防衛当局間協議や共同訓練などを通じた安全保障・防衛協力を引き続き強化していくことで一致した。