旧車ビジネスの中核にある「ヘリテージパーツ」
新事業の中核は「ヘリテージパーツ」の販売だ。
ヘリテージパーツとは、復刻された補修部品のこと。自動車メーカーは新車を製造すると、ディーラーへの卸売販売に合わせて補修部品の供給も始める。補修部品を在庫して、ディーラーや修理工場からの発注に迅速に対応する体制を敷くわけだ。
複数の自動車メーカー関係者に話を聞くと、補修部品の製造継続年数は正確には決まっておらず、一般的に20年前後だという。
自動車メーカーでつくる業界団体の日本自動車工業会によれば、新車を購入したユーザーのクルマの保有年数は7年強で、新車購入者の約2割が、10年を超える保有年数に達する。その後、中古車として二次流通することを考えると、自動車メーカーが新車製造後、20年程度補修部品を製造し続けることは妥当だと考えられる。
そうした中で、自動車メーカーはすべてのクルマに対して、ヘリテージパーツを設定しているわけではない。
あくまでも、対象となるのは人気の旧車だ。
旧車市場を牽引するスポーツモデル
具体的には、トヨタでは「ランドクルーザー」「カローラ・スプリンター(型式AE86)」「スープラ」、日産は「スカイラインGT-R(R32、R33、R34)」、マツダは「ロードスター(NA)」、ホンダは「NSX」といった主にスポーツカーである。
各社のヘリテージパーツ事業の状況を調べると、トヨタ(GR)は「AE86(カローラ・スプリンター)」向けエンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロックを新規採用した。新車発売当時の部品と比べて燃焼室の切削加工を追加するなどして、エンジン個体の圧縮比のばらつきを抑えた。単純に部品を復刻したのではなく、現代の技術を活用してより良いパーツを供給することを、トヨタは心がけている。
ディーラー独自にレストアをするケースもある。トヨタモビリティ神奈川では「スープラ」のほかに、1980年から1990年代「クラウン」のレストア依頼が増えているという(写真:筆者撮影)
ヘリテージパーツ事業参入で最後発のスバルは2026年2月、初代「インプレッサ(GC/GF)」を皮切りに「スバルヘリテージサービス」を始めた。
ユーザーからの問い合わせがあると、スバルが用意したパーツリストを確認し、スバルが適合と在庫の確認を行い、対応可能な販売店を検索する。パーツの取り付けや交換は販売店の店舗で行う仕組みだ。
スバルは初代「インプレッサ(GC/GF)からヘリテージパーツ事業を開始(写真:筆者撮影)
今後、対応車種を拡張する予定だが、スバル本社側がフルレストアするプロジェクトについては現時点で未定である。
これまでもヘリテージ関連サービスを行っていたホンダは、「NSX(初代)」向けのヘリテージパーツを活用した車両全体の復刻であるレストア事業を「ホンダヘリテージワークス」として刷新した。
関係者によれば、エンジンのオーバーホールやサスペンションの修繕などを行うベース作業の料金が1000万円強。そのほか、ボディや内装などフルパックでレストアすると料金は2000万円を超える。
そして、フルレストアサービスで最も積極的な事業展開を計画しているのが日産だ。
2025年12月に日産モータースポーツ&カスタマイズ社のNISMO事業所(神奈川県横浜市)で実施した報道陣向け事業説明会では、1980年代末から2000年代初頭にかけて生産販売された、いわゆる第2世代「スカイラインGT-R(R32/R33/R34)」向けのレストアサービスを強化すると説明。国内で一部の販売店に構えている「パフォーマンスセンター」を米国で展開することを計画していることを明らかにした。