強硬姿勢を競うイラン革命防衛隊の反撃能力
一方、イラン側の反撃への備えは、明確さという点では米側とは対照的だ。例えば2月に入ってイスラム革命防衛隊(IRGC)による海上演習は、ホルムズ海峡の封鎖というシナリオを示唆するメッセージを強調し始めている。
2026年2月16日、IRGC海軍はホルムズ海峡を一時閉鎖して「ホルムズ海峡のスマートコントロール」と名付けた軍事演習を実施している。IRGCの高速攻撃艇群による飽和攻撃シナリオ訓練に加え、注目すべきは、新型艦載防空ミサイル「サイヤード3G」の初発射に成功していることだ。このミサイルは射程150キロで海峡周辺での制空権争いに新たな変数をもたらす。また、同演習ではIRGCは、シャヘド自爆ドローンなどによる攻撃演習も行っている。
この機会に乗じて、ホルムズ海峡からオマーン湾の海域においてイラン、ロシア、中国の3カ国による「マリタイム・セキュリティ・ベルト2026」と題する合同海上演習まで連続して行ったことは、米国に対する強い政治的メッセージであることは疑いをえない。
ちなみに、この合同演習前に、これら3カ国が参加して実施すると報道された一方で、演習終了後には、中国のメディアは中国の参加については一切沈黙し、ロシアとイランのメディアまで、ロシアとイランによる合同海上演習であったと報道していることは興味深い。これは、米国やアラブ諸国との外交的摩擦を恐れた中国が、イランへの支持は示しつつも、証拠を残さない路線を選んだ可能性が高く、3カ国が揃って口裏を合わせた可能性もある。
外交交渉の最中にも、IRGCによる軍事調達活動は止まっていない。2025年12月にロシアとの間でヴェルバ携帯式防空ミサイルシステム500基・迎撃ミサイル2500発の取得契約が締結されたと報じられている。さらに2026年2月24日、イランが中国からCM-302超音速対艦巡航ミサイルを購入する交渉が「最終段階」に入ったとも報じられている。
このミサイルは、中国の「YJ-12(鷹撃12)」の輸出用モデルで射程290キロ以上、速度マッハ3超とされ、米空母打撃群に対する深刻な脅威となり得るゲームチェンジャーと見てよい。これらの交渉は、2025年6月に米軍がイランの核施設を急襲した「ミッドナイトハンマー作戦」後に急加速したという。
権力を握る「イスラム革命防衛隊」──空爆では打破できない権力構造
しかし米国側にとって最も深刻な問題は、軍事的リスクにも増して、IRGCを打倒しても体制そのものを容易には一朝一夕には変革できないという構造的事実にある。
クリンヘンダール研究所の分析によれば、イランにはIRGCとその関係者が参画する「革命的宗教財団(ボニヤード)」が癒合した「軍事・ボニヤード複合体」が存在し、イランGDPの50%以上を実効支配している。
この宗教・軍事・産業複合体は、1979年革命後の資産没収と再分配によって誕生し、イラン・イラク戦争、アフマディネジャード政権による憲法44条再解釈(事実上の国有財産のIRGCへの払い下げ)、そして繰り返される欧米制裁という逆境をくぐり抜けるたびに、その経済支配を深めてきた。最高指導者の直接任命を受けたこれらの機関は、議会にも政府にも説明責任を負わない。とりわけ、革命防衛隊の工兵部門の巨大組織「ハタム・アル・アンビア」は、800社超の企業、2500件超のインフラプロジェクト(ダム、高速道路、地下鉄、石油精製)を手がける国家内の巨大な経済機構として機能している。