4つの目標、1つの混乱

 Axiosウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、米軍のダン・ケイン統合参謀本部議長はトランプ大統領に対して、イランに対する限定的な打撃による交渉圧力からイラン・イスラム共和国体制の打倒を目指す継続的な攻撃作戦まで作戦オプションを提示しつつ、軍事作戦に伴うリスクについて警告したという。

ワシントンの連邦議会議事堂で、ベネズエラ情勢に関する上院議員らへの機密ブリーフィングに出席したダン・ケイン統合参謀本部議長(資料写真、2026年1月7日、写真:AP/アフロ)

 しかし問題の核心は、オプションの多寡ではなく、それぞれのオプションに対応する「政治的目標」が政権内で一致していないことにある。この点で、イラン攻撃に関して、ワシントンではいまだ認識の一致が不十分なのだ。

 すなわちトランプ政権は1つの作戦に対し、実に4つの異なる目標を同時に掲げて浮動しているといってもよい。(1)核開発の完全放棄、(2)弾道ミサイル計画の解体、(3)イラン・イスラム共和国の体制転換、そして(4)プロキシ勢力の無力化である。

 これらは互いに、要求する軍事的手段の規模と性質が根本的に異なる。昨年(2025年)6月の12日戦争が証明したように核施設への限定的打撃で体制転換が達成できるはずはない。同時に、体制転換を狙う総力作戦は、けっして核合意交渉とは両立しない。クラウゼヴィッツが「手段はその目的から切り離して考えることは決してできない」と述べた警告を、そのまま体現した状況にある。

 かつてCENTCOM(U.S. Central Command:米国中央軍)を率いたジョセフ・ボーテル退役大将はこの状況を「エンドステートが何かを明確に定義することが重要だ。それが達成度の基準となる」と直言した。そもそも軍事力のみでイランの核プログラムを永続的に破壊することはできないのである。それは最終的には外交を通じたディールか、イランの体制の政治変革によってしか達成できないということは、2015年にイラン核合意(JCPOA)が結ばれた時以来の真理なのだから。